同じタイプでも進化速度は柳田以上! 阪神・佐藤輝明内野手(22)は3日のオリックス戦(甲子園)で5試合ぶりの一発を放った。試合は3―7で逆転負けしたが、怪物新人の復調で次カードのソフトバンク戦に弾みをつけた。虎の長距離砲のフルスイングは代名詞の一つだが、プロ入り後の進歩はただの力任せではない対応速度にあるとメジャー関係者も驚きの声を上げている。近い将来、鷹の主砲をしのぐ強打者になる可能性も大いにあるという。

 オリックスとの関西ダービーに1勝2敗と負け越し、交流戦に入って4勝5敗と負けが先行している阪神だが、この日は佐藤輝が気を吐いた。2回に相手先発・山崎福のスローカーブを一閃、5試合ぶりとなる14号ソロを聖地甲子園の右中間最深部に放り込んだ。推定飛距離130メートルの特大弾に猛虎の若き長距離砲は「速い球を待ちながらしっかり遅い球についていけた。昨日は同じようにカーブにやられていたんですけど、今日は打つことができて良かった」と振り返った。

 4日からのソフトバンク戦(甲子園)では、フルスイングが持ち味の球界を代表する大砲対決にも注目が集まる。目下、パ2位の12本塁打の柳田とセ3位の14本塁打の佐藤輝の〝マン振り〟対決だ。デビュー時からとかく「柳田タイプ」と評されることの多かった佐藤輝だが、柳田を新人時代から知るナ・リーグのMLBスカウトは「もちろん打席での対応力があるのは経験豊富な柳田だけど、佐藤輝は柳田を超えるスピードで成長しているよ」と声を大にする。

 ともに大卒入団ながら柳田が一軍に定着し、100試合、300打席以上に立ったのはプロ3年目の2013年。レギュラー定着の時期もルーキーイヤーで全試合出場の佐藤輝が上回っているだけでなく、中身も同様だという。前出スカウトが例に挙げたのは2日の試合での8回の打席。K―鈴木の内角球を詰まりながら右前に運んだ一打だった。開幕当時からの変化であり〝進化〟でもある部分として「分かりやすいのが最近の佐藤輝は詰まってバットを折るシーンが減っている。内角に対応するという点で、その成長速度は柳田の比ではない」と指摘する。

 開幕直後はほぼ連日、多いときには1試合でバットが3本折れたこともあった。だが、最近は明らかにペースダウン。要因とされるのが内角球への対応の進歩だ。

「2人とも〝振れる〟のが長所。でも、それを貫こうとすると、内角の速球系の対応が問われる。柳田はレギュラーになってからも2年くらいは、内角への対応が間に合わず、空振りだったり、バットを折っていたりしていた」

 一方で、このコースを打ちに行き、安打を稼げる打者になると、うれしい副産物もついてくるという。

「三振が減るようになるし、本塁打も増える。内角を詰まってファウルではなく、外野のフェアゾーンに飛ばせるようになるということは、ミートポイントで、手が窮屈な状態ではなく、伸びた形で捉えられているから。腕をうまくたたみながらスイングできないといけないし、そうかと言って少しでも体が開いたらファウルになる。言うほど簡単じゃないけど、柳田も、これをマスターしてから打率とか、多くの項目で高いアベレージを残すようになった」(同)

 周囲の予想をはるかに上回るペースで成長している虎の怪物新人。週末の直接対決で、その片鱗を〝フルスイングの先輩〟の前でも発揮したいところだ。