オバQ効果でDeNA打線“復活” 選手をその気にさせる田代コーチの指導力

2021年06月01日 11時00分

大和を出迎える田代コーチ(左から2人目)

【赤坂英一 赤ペン!!】これ、“オバQ効果”というやつか。田代富雄巡回打撃コーチが交流戦から試合中にベンチ入りするや、DeNA打線がにわかに活気づいた。

「打席に入る前、打ってこい!って田代さんに言われたんです。期待に応えられてよかった」

 そう話していたのは、5月27日のオリックス戦で貴重な中押しタイムリーを打った大和だ。実は一昨年6月19日の日本ハム戦でも、大和は田代コーチのおかげでヒーローとなっている。6―6の9回一死二塁、打席に向かう大和に田代コーチが「おなかがすいたからこの回で決めてくれ」。このひと言で肩の力が抜け、左中間へ運んだ打球がサヨナラ二塁打となったという。

 今年66歳と首脳陣最年長の田代コーチだが、親子ほども年齢の離れた選手を乗せ、結果を出させる指導力は健在。私は大和の話を聞いて、2000年に首位打者と新人王を同時に獲得した金城龍彦(現巨人コーチ)の新人時代を思い出した。

 1999年、両打ちで俊足、二軍戦で1番を打つ金城に、二軍監督が「グリップ2つバットを短く持て」と指導した。これに拭い難い違和感を覚えた金城は、当時二軍打撃コーチだった田代に相談。金城の悩みをじっくりと聞いた田代コーチは、自ら二軍監督に掛け合って、金城を元通りのバットを長く持つ打ち方に戻す許可を得ている。

 田代コーチはこの時、金城に言い聞かせた。

「いいか、バットを長く持つと決めたら最後までやり抜くんだ。ちょっと打てないからって、短く持ったりしちゃいかん」

 これで金城がすぐ結果を出したわけではない。実際、1年目はほとんど二軍暮らしだった。その間、田代コーチは、金城にこう言い続けている。

「大丈夫。ゆっくりやれ。そのうち打てるようになる。俺が保証するから」。そうした田代コーチの指導がなかったら、00年の首位打者もレギュラー定着もなかっただろう。

 試合前のフリー打撃の最中、田代コーチは常にケージの横で選手の練習を見る。ケージの後ろで見守る打撃コーチが多い中、なぜ横なのか。私が以前質問したとき、田代コーチはこう答えた。

「選手が調子のいい時と同じ打ち方をしているかどうか、横から見ているとよく分かるからなんだよ。フォームが崩れたり、打ち方が変わったりすると、すぐに見つかる」

 選手への的確で効果的な助言は、こういう日頃の観察眼から生み出されているようだ。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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