〝阿部イズム〟の一軍注入となるか。25日の交流戦初戦・楽天戦(東京ドーム)から一軍バッテリーコーチに配置転換された巨人の実松一成コーチ(40)へ、大きな注目が集まっている。交流戦を迎える原巨人が、バッテリー強化を図る中、日本ハムに計8年在籍し、パ・リーグをよく知る人物として、二軍バッテリーコーチだった実松コーチを大抜擢。しかし、そんな緊急昇格の裏には、別の狙いがあった。


 待ちに待った2年ぶりの交流戦。初戦となったこの日は、シーソーゲームの展開となりながらも、4回にウィーラーが6号逆転3ランを放つと試合の流れを一気につかみ、終わってみれば計17安打の9―4で快勝。原監督も「非常に存在感がありますし、好調が続いてくれているのは非常にいいことですね」と助っ人の活躍を労った。

 白星に沸くベンチで胸をなでおろした男がいた。同日をもって正式に一軍に合流した実松コーチは、試合前練習から捕手陣へ精力的に指導。正捕手・大城とは長く座り込んで話し合い意見交換を行うと、ゲームに入ってからは原監督のそばで試合の動きを注視し、時折相談し合う場面も見せた。

 試合後には「久しぶりに一軍独特の緊張感を味わいました。チームが勝ったことが良かったです、それがすべてです。大城も銀(炭谷)もよく頑張ってくれました。チームのために今後も頑張っていきます」と、率直な心境とともに新たな決意を表明した。表向きは「パ・リーグ対策のための参謀」として期待を寄せられている実松コーチだが、一軍昇格には別の狙いもありそうだ。

 それは阿部流の指導。兼任コーチだった日本ハム時代は常に穏やかで優しく、若手からは「サネさん」との愛称で呼ばれていたが、巨人に復帰して表情は一変。旧知の仲である阿部二軍監督の下「鬼軍曹」の右腕として二軍バッテリーコーチに就任すると、時に若手に「ここで手を抜くな!」「自分に甘えるな!」と語気を強めるなど、スパルタでダイヤの原石を磨き上げる〝阿部イズム〟を継承し、若手捕手陣を厳しく鍛え上げた。

 この変化について、実松コーチは「球団によってそれぞれ良さや色は違ってくる。ハムにはハムの雰囲気があるし、巨人には巨人の雰囲気があるからね。育成方針も違うし、そこはこちら(指導者)側が変化していかなければいけないところ」と語っていた。その言葉通り、現在の指導スタイルは「巨人軍の指導者」として、自らを順応させた格好だ。

 チームが常勝軍団であり続けるため「鬼」の心で捕手陣へ気合を入れながら、時には「仏」の心でメンタル面をフォロー…。バッテリー強化のため、約2年の歳月を経て取り込んだ〝阿部イズム〟を、一軍のグラウンドでも注入していけるか注目だ。