阪神・和田豊監督(52)が来季続投に大きく前進した。6日、広島が巨人に敗れたため阪神の2年連続2位が確定。クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージも本拠地・甲子園球場で開催することになった。これで微妙となっていた和田監督の去就も球団サイドが打ち出した続投方針を貫く形で決着する方向だ。それにしても、なぜ球団は監督交代案も噴出する中、続投にこだわったのか――。その“深層”を探った。

 南球団社長が今季で3年契約が満了する和田監督の続投方針を明かしたのは8月27日のこと。その時点で首位・巨人と1・5ゲーム差の2位と逆転Vを十分に狙える位置だったため続投に支障はないはずだった。

 しかし、勝負どころの9月に入ると巨人との直接対決3連敗を含む6連敗という大失速で巨人とのゲーム差は7・5に開き、逆転Vは一気に絶望的になってしまった。順位も3位に後退し、Bクラス転落の危機にも直面。CS出場という最低ノルマも危うい状況にまで追い込まれた。この時期から電鉄本社をはじめ各方面から続投方針を疑問視する意見が続出。次期監督候補に2005年の優勝監督でもある岡田彰布氏(56)、人望が厚い金本知憲氏(46)の名前も浮上した。

 それでも球団サイドは一貫して続投方針を堅持。悪夢の6連敗後は11勝6敗とチームを立て直し、75勝68敗1分けでシーズンを終了。最後は広島の黒星待ちとなったものの、何とか昨年と同じ2位の座を確保したことで続投のメドが立った。

 CSで惨敗しない限り、和田監督が来季も指揮を執ることになるが、ここまで球団が和田続投に固執した背景には球団フロントが目標とする「球団運営の理想像」がある。球団関係者によると「フロント内には10年以上前から“球団主導の球団運営”を目指したいという強い思いがあった。監督を中心に行う以前のチームづくりでは監督が交代するたびに目指す方向性が変わってしまうため長期的に安定した戦力を維持することは難しい。フロントが長期的ビジョンで育成、補強を行っていくことで、毎年優勝できる戦力を維持し、常にファンを満足させるチームづくりをしたいと考えている」という。

 星野監督、岡田監督と采配だけでなく編成面でも手腕を発揮できる指揮官で03年、05年と優勝。岡田監督が退任する08年までは毎年、優勝争いに参戦したものの、09年以降はチームの高齢化が目立ち、Bクラスに転落するシーズンもあった。

 こんな状況に危機感を募らせた球団フロントは安定した戦力を現場に供給できる体制の整備を急いでいる最中だ。球団スタッフはこう説明する。「ようやく生え抜きの若い選手も結果を出し始めている。このまま効果的な戦力補強をしながらベテランと若手がうまくかみ合う形を作っていければ、という思いもある。この形を継続するためにも監督を代えたくないと考えている」

 別の関係者も「確かに有力候補となった岡田さんの手腕も素晴らしい。当然、もう一度、という話もある。ただ、今は将来のためにも現在取り組んでいるフロント方針を和田監督のもとで継続することがベターという判断」と解説する。もっとも、7日発行の一部スポーツ紙が「金本氏に入閣を要請する運び」と報じるなど首脳陣は大幅に刷新される可能性が高い。

 順調に契約を更新すれば和田政権も4年目に突入。勝利数も就任1年目の55勝から2年目の73勝、3年目の今季75勝と伸びている。堅実に前進する“和田体制”に球団の未来を託す。