躍進の秘訣はこんなところにもあった。シーズン前半戦を終え、開幕から首位を走る矢野阪神で、その原動力としてたびたびクローズアップされるのが、8人で編成された外国人選手の活躍ぶり。そのなかで日本人選手ような“いぶし銀”の働きを見せているのが、在籍年数では最年長となるジェフリー・マルテ内野手(29)だ。開幕から「3番・一塁」で全試合に出場し、猛虎打線に欠かせぬ存在となっている一方、守備でも目覚ましい進化を遂げている。
 
 本拠地で中日を迎えた11日の初戦はドロー決着も、3点追う劣勢から最終的に同点に追いついた。中止となった12日も当然、矢野燿大監督(52)は「やりたいというのはあったけど、まぁ青柳には勝たれへんわな」とニヤリ。本来はこの日先発予定だったチーム屈指の雨男・青柳晃洋(27)が早くも、今季2度目の“水入り”を記録したことを引き合いに試合のなくなった一日を余裕を持って受け止めた。

 開幕から一度も首位を譲らず、貯金は今季最多14。開幕直後は先発投手陣の好調ぶりが光ったが、34試合を戦ったなかでは打線の安定ぶりも際立ってきている。12日現在、チーム打率2割6分1厘、172得点はともにリーグ1位。今年は数年来の懸念事項でもあった“貧打線”の印象を完璧に払拭。その中核を担っているのが、開幕から全試合「3番・一塁」で先発を続けている3年目の助っ人・マルテだ。

 打率は2割8分台とはいえ出塁率、得点圏打率はともに4割以上。外国人ながら、リーグ4位の21四球と、日本のストライクゾーンに最後まで適応できない助っ人選手も多いなか、矢野監督からも抜群の選球眼を称賛されることは珍しい光景ではない。11日の試合でも指揮官が「今日だけで(相手に)何球(=28球)投げさせたんだろうと思う」と感嘆するほど、粘り強い打撃は今や打線に欠かせないスパイスだ。

 高い貢献度はバットだけではない。むしろ飛躍的に安定感を増しているのが一塁での守備力。終盤での守備固め、代走などフル出場は8試合だが、失策数はわずか「1」。9割9分6厘の守備率は昨季のゴールデン・グラブ賞受賞者の中日・ビシエドを抑え、堂々のリーグ1位だ。

 チーム失策数はリーグ最下位の27と、昨季まで3年連続12球団ワーストの失策数でもあった防御力は依然、チームの解消すべき継続課題だ。そんななかでも、マルテは自らの欠点を克服している。

 昨季、一塁・三塁手として出場29試合で7失策、10月23日の巨人戦ではプロ野球新記録となる一塁手として1試合4失策という不名誉記録を樹立。試合後の指揮官も「言いようがないわ」とブチ切れてしまうほど守備下手な助っ人が今ではGグラブ賞も狙えるほどになるとは、誰も想像できなかっただろう。

「失敗を次にどう生かすか?」「日々成長」がモットーの矢野政権下で、来日3年目を迎えた助っ人・マルテは「ビフォー&アフター」の模範生としても、躍進のシンボルとなっている。