リーグ3連覇を目指す巨人は首位・阪神と3ゲーム差の2位につけている。ただ、順風満帆というわけではなく、新型コロナウイルスの影響などから戦力が整わず、原辰徳監督(62)もやり繰りに四苦八苦。丸佳浩外野手(32)の途中交代に代表される非情ともとれる采配が話題を呼んだ。しかし、本紙専属評論家の大下剛史氏は指揮官が見せている厳しい姿勢には「別の狙い」があるという。一体、どういうことか――。

 首位・阪神を追う巨人は〝大波小波〟のゴールデンウイークとなった。4月30日からの中日2連戦は本拠地・東京ドームで2連敗。3日からの敵地での広島3連戦は2勝1分けで乗り切った。今季最多タイの貯金7で、首位と3ゲーム差。長いペナントレースを考えれば決して悪い位置取りではない。

 とはいえ、頼みにしていた新助っ人テームズがデビュー戦で右アキレス腱を断裂して帰国。丸佳浩外野手(32)ら新型コロナ陽性判定からの復帰組の調子も今ひとつで打線は本調子と言い難い。

 そんななか、指揮官は勝利のため次々と手を打った。1日の中日戦では2打席連続三振に倒れた丸を4回表の守備からベンチに下げた。翌2日には左腕先発時の丸のスタメン落ちまで示唆したほどだ。

 その丸が3日の広島戦で右腕・森下から本塁打を含む2安打でチームの勝利に貢献。4、5日は左投手(床田、高橋昂)相手にも先発出場し、安打の出なかった4日にも1―1の7回に四球で出塁したり今季初盗塁を決めるなど存在感をアピールした。

 原采配を見届けた大下氏は「ケガ以外の理由で丸ほどの実績がある選手を2打席で交代させられるのは、12球団を見渡しても原監督だけだろう。若いころに線が細かった丸は負けん気と猛練習でここまで育った選手。選手を発奮させるのが本当にうまい」と理解を示した上で「もちろんリスクはあった」と切り出し、こう続けた。

「丸が交代した次の試合で本塁打を含む2安打と打ったから良かったが、もしダメだったらそのままドツボにはまってしまう恐れもあった。そのリスクを背負えるのが原監督だ」

 指揮官がメスを入れたのは丸に対してだけではなかった。

「梶谷に対してもそう。3日には3打数無安打で8回に中島を代打に出された。翌4日に梶谷がマルチ安打を放ったのは意地だろう。同じ4日の試合では同点の7回無死一塁で坂本に犠打のサインが出た。勝利のためならジャイアンツにタブーはない」(大下氏)

 FA組、生え抜きを問わず、最善策を選ぶ指揮官に一切の忖度はないように見える。だが、大下氏は「4番・岡本和に対してだけは原監督も相当な配慮が見られる。他の主軸への一見、非情に見えるサインや交代は、4番に対する間接的なゲキの意味もあるのだろう」と指摘する。

 開幕からチームでただ一人、不動の「4番・三塁」で出場し続ける昨季のセ・リーグ2冠王は、25打点こそセ・トップタイだが5本塁打は物足りない。セ・トップ10本塁打の山田、村上(ともにヤクルト)に大きく離されている。原監督も「和真がもうちょっと安定してくれるとね。凡打の内容がもうちょっと上がってこないとダメだね。打つべきボールを打ちにいっているか」と完全復活を心待ちにしている。

 出だしで阪神の先行を許したものの、大下氏は「巨人は岡本和の状態などまだ伸びシロは多い。選手の力を引き出すことに長けている指揮官が率いる巨人がやはりV本命だろう」とも言う。4番の一発はチームをこれ以上なく勢いづける。岡本和が原監督からの「無言のゲキ」をどう受け止めるか注目だ。