〝遅れてきた男〟がチームを救った。ソフトバンクが5日の楽天戦(ペイペイ)に5―5のドロー。負ければ4カード連続の負け越しとなるところを9回、相手守護神・松井から左前へ運ぶ起死回生の同点適時打を放ったのが上林誠知外野手(25)だ。

 3日に一軍へ昇格したばかり。この日が初のスタメンだった。1番・中堅で出場すると則本昂から3回に適時二塁打。5回には1号2ランを放った。3安打4打点の大暴れで「今日は自分にとっての開幕戦。何とか印象づけられるようにと集中できていた」と手応えを口にした。

 走攻守3拍子揃ったタイプで2018年に全試合出場したチームの中核候補。しかし、以降は打撃不振で代走や守備固めでの出場が多くなっていた。今季は同様の起用が続くより打撃面を磨いて大きくレベルアップしてほしいとの判断であえての開幕二軍だった。

 今回の昇格は首脳陣からすればデスパイネの抹消に伴う苦渋の選択。決して打撃好調とは見られておらず、チーム事情から足や守備での貢献を期待してのものだった。それが相性面もあり好投手・則本昂に対して起用されると、いい意味で期待を裏切る最高の活躍。工藤監督は「大したものです。彼の意地だったりプライドだったりが今日のヒットやホームランにつながった」と称賛した。

 1か月以上に及ぶファーム調整。急きょの昇格だったが心の準備はできていた。上林は再昇格後のイメージについて、こう高い目標を掲げて決意を口にしていた。「すぐには進化できないですけど。大谷翔平さんを見ていたら、みんなワクワクするし、毎打席こっちも楽しみですし。そんな感じになっていきたい。ウチではギータさん(柳田)という存在ですけど、何かやってくれそうという期待感を持てる選手になりたい」

 ポテンシャルはチーム屈指。大器が逆襲のノロシを上げた。