12球団随一の戦力を誇るソフトバンクで「右の大砲」として立身出世を果たそうとしている。今季、プロ9年目で初の開幕一軍をつかんだ真砂勇介外野手(26)だ。2日のオリックス戦(京セラドーム)に「7番・中堅」で先発出場。2試合連続のスタメン起用は今季初だった。

 第1打席で右前打を放ち、第3打席はきっちり右犠飛。1点を追う9回は先頭で粘って最後は中前打で出塁と、これで先発出場した全6試合で安打を記録した。左投手対戦時に出番を得てきた26歳は開幕から結果を残し続け、実力で出場機会を増やしている。

 走攻守揃った金の卵として、2012年のドラフトで4位指名され京都・西城陽高から入団。当初から抜群の身体能力を買われ、鷹の未来を担う有望株として上林誠知外野手(25)とともに大きな期待をかけられてきた。

「ミギータ」の愛称を持つ26歳が、ついに覚醒の時を迎えようとしている。昨季は8月末に一軍昇格を果たすと、一度も降格することなくシーズンを駆け抜けた。公私で柳田悠岐外野手(32)を慕い、毎年オフの自主トレに同行。技術を惜しみなく伝授され、昨オフは打席での「考え方」や「心の持ちよう」を重点的に指南された。一朝一夕にはいかないことを理解し、一軍で戦える心技体を一つひとつ身につけてきた。

 結果がついてくるのには理由がある。昨季から真砂を見守る平石洋介打撃コーチ(41)は「今年さらに準備の仕方や取り組み方が変わっている」と明かし、こう続ける。「ティー打撃でも一球もムダにしないんですよね、真砂は。どこかで抜いてしまったりというのがありがちなんですけど。本当に一球もムダにしない。おろそかにしない」。

 始動の確認などもなく、ティー打撃の1球目から全集中。それは「絶対に準備を怠らない」姿勢があってこそなせること。かつてPL学園の主将を務め人間観察にたけた指導者は、一過性ではないブレークの根拠を示した。

「レギュラーを張ってる選手と出場機会が限られている選手では違う。一本出すのも本当に大変な中で、腹をくくってやっている」(平石コーチ)。打席数はまだ少ないが、打率4割(25打数10安打)出塁率4割7厘は立派。他球団のマークも今後厳しくなるだろうが、鷹が久しく切望していた「右の大砲」が、着実に階段を上がっている――。