月が替わって救世主がやってきた――。今季からソフトバンクに加入したニック・マルティネス投手(30)が、1日のオリックス戦(京セラドーム)に初登板初先発。最速156キロの真っすぐに制球良く変化球を織り交ぜて、6回5安打無失点の快投で初勝利を飾った。

 打線が初回先頭から5連打を浴びせ4得点すると、松田、柳田、周東に中押し、ダメ押しの効果的な一発も重なって強力援護。先発全員17安打の猛攻で今季最多13得点を叩き出すと、投手陣も完封リレーで応えた。前夜、逆転サヨナラ負けを喫した王者が胸のスカッとする大勝。常勝軍団らしく、一日でムードを好転させた。

 工藤監督のえびす顔と弾んだ声が印象的だった。「初回の4点もそうだが、3回の松田の(3ラン)ホームランが今日のマルティネスの調子を考えれば大きかった」。序盤の効果的な攻撃が新戦力の快投を生んだ。

 制球に苦しむタイプではない助っ人右腕は「楽しみにしていた」という正妻・甲斐の好リードにも導かれ充実の98球。「甲斐がいいリードをしてくれて、頼もしかった」。相棒をたたえるあたりが紳士的だった。

 前夜は守護神・森を欠く中で、代役を務めた岩崎が打たれサヨナラ負け。盤石のリリーフ陣が崩れた心理的ダメージは大きかった。開幕から先発陣が波に乗れず、投手陣が〝四球禍〟で自滅。投手王国の自信が揺らぐ事態が重なり、チームに影を落としていた。そんな状況で鷹デビューを飾ったマルティネスが、無駄のない投球で応えた意味は大きい。

「本当にナイスピッチングだった。頼りになる選手がまた出てきてくれてうれしい」。工藤監督の安堵するような喜びの声が、この日の1勝の価値を物語っていた。