完全復活には、まだ道半ば…。阪神・藤浪晋太郎投手(27)が23日のDeNA戦(甲子園)で今季初黒星を喫した。7四死球の大乱調で4回4失点KO。先発としての役割を果たせなかった。近年の不調の原因として度々起こる制球面の課題。克服にはマウンドから本塁の間に存在する〝目に見えない〟あるポイントでの変化球の精度アップが鍵を握りそうだ。


 今季5度目の先発はさすがに出来が悪すぎた。「序盤から投球のタイミングが合わず、情けないピッチングをしてしまいました」。課題でもある制球面の不安が露呈。投球にならなかった。

 初回こそ三者凡退で2三振を奪う上々の立ち上がりだったが、2回先頭・佐野への四球をきっかけに崩れた。ソト、宮崎と3連続四球を与えた末に先制点を献上。3回も二死から佐野に中越え適時二塁打を浴びた直後から再び制球を乱し、3連続四球で押し出し。藤浪は4回先頭のオースティンに死球を与えたところで降板を命じられ、被安打2ながら7四死球が致命傷となった。

 2回は直球にスプリット、3回は直球にカットボール中心の配球で、ストライクを取るのにも苦心した。一方で150キロ超の速球を生かすためには、今後もこの2つの変化球の出来は、藤浪のパフォーマンスを左右することになりそうだ。すでに今季の藤浪と対戦したライバル球団関係者は、こう話す。

「今年は直球軌道の中でカットなどのスライダー系、スプリットなどの変化球が操れている。昨年までは変化球、特にスライダー系は投げた瞬間に分かるぐらいで、そうなると打者も狙っていない限り手を出さない。だけど今年は打者も真っすぐを打ちに行って『曲げられた』って。ピッチトンネルの中で勝負してくるから対応も難しくなる」

 この「ピッチトンネル」とはマウンドとバッターボックスの18・44メートルの距離で、打者が球種やコースに応じて、バットを振るか否かを判断する空間地点のこと。セ・リーグでは中日・大野雄が直球軌道のラインからツーシームやチェンジアップなどを操っている。広島・野村など直球が140キロ中盤でも複数の変化球をこの空間地点を経由して操れる技術があれば、打者にスイングさせて空振りや凡打に打ち取れる確率が高くなることから変化球の「曲げどころ」となる通過地点として、最近では投球用語として頻繁に用いられている。

 今季は「精度が上がった」とされる藤浪の変化球で、特に評価が高いのはカットボールなどのスライダー系球種。元来、横に変化する球筋とはいえ、これまでは曲がり幅が直球の軌道ラインから大きく外れることが多かったが、今季はスライダー系の球種軌道が「ピッチトンネル」の中に収まってきていたという。

 藤浪も日々のブルペンから研究を重ねている。キャンプでは弾道測定器「トラックマン」が設置されたレーンで投げ、変化球のスピン量など常に数値を確認しながら調整し、投球動作の解析を行う機器「ラプソード」も活用。ボールの回転軸や回転方向のほか、指先の感覚が深く関与する回転効率の項目などで、変化球の精度を取り戻すことに並々ならぬ力を入れていた。

 リーグ4位の24奪三振のうち、18三振を空振りで奪っている。自己最高の14勝を挙げた15年は、221個で最多奪三振のタイトルを獲得した。元来持っていたと推測される「ピッチトンネル」を取り戻すことが復活への必須条件となりそうだ。