セ・リーグ3連覇への意外なキーマンは――。巨人はセ球団との対戦がひと回りし、6勝6敗3分けで3位につけている(12日時点)。新型コロナ禍による新助っ人2人の来日遅れ、陽性判定を受けた主力選手の離脱があった中での戦いぶりは本紙専属評論家の大下剛史氏にどう映ったのか。「上出来」と評した一方で、流動的な起用が再燃した〝二塁手問題〟に鋭くメスを入れた。


 出だしは順調だった。開幕カードのDeNA戦こそ2勝1分けで滑りだしたものの、丸やウィーラーら4選手が新型コロナの陽性判定を受け、その後は4カード連続で勝ち越しなし。苦しい用兵を余儀なくされたが、大下氏の見立ては「この戦力で勝率5割ならば上出来」だった。

 加えてチームには朗報も舞い込んできた。すでに来日していた新助っ人のスモークとテームズの隔離期間が終了。13日からの中日戦前に東京ドームでシート打撃などを行い、初実戦は16日が予定されている。舞台は二軍の楽天戦(ジャイアンツ球場)が基本線ながら、原監督は「可能性がないとは言えないよ。そのケースもありますね」と同日のDeNA戦(横浜)での即一軍デビューにも含みを持たせた。

 メジャー通算196発のスモークと96発のテームズが戦列に加われば打線の厚みは格段に増す。また、いずれ丸らも復帰すれば、昨オフに原監督が描いた戦力構想がいよいよ現実のものとなる。ただ、大下氏が首をかしげて指摘したのは昨季、一応の決着をみた「二塁問題」だった。

 開幕戦でスタメン起用されたのはオープン戦で絶好調だった若林晃弘内野手(27)。若林は2戦目の3月27日に右太もも裏を痛め、二塁で計3試合先発出場した後に新型コロナ陽性が判明した。その若林の〝代役〟は吉川尚輝内野手(26)が7試合、広岡は3試合、増田大と北村が各1試合で務め、15試合ですでに5選手。大下氏は「センターラインの二遊間は守りの要。強固な二遊間を築ければ、数年先までチームを安定させられる。いろいろ事情もあるだろうが、二塁に5人はさすがに多すぎる。これではチームもなかなか安定しない」と警鐘を鳴らす。

 その中でも「気がかりだ」としたのは昨季、好不調の波はありながらも112試合(スタメンは94試合)に出場し、自身初の規定打席に到達した吉川だった。

「昨季、ある程度の実績と結果を残した2年目の今季は吉川本人にとってもチームにとっても大事な年となるはずだ。吉川も多少の自信をつけただろう。そこで開幕から外されると、プレーヤーはガクッとくるもの。しかし、そこで腐ったら終わりだ。まさに踏ん張りどころだろう。ここを乗り越えられれば、もうひと回り強いプレーヤーになれる」(大下氏)

 今季の吉川は出場12試合で打率1割1分1厘と低迷し、守備でも2失策を記録している。巨人にとっての長年の課題をクリアしたかと思われた矢先の〝再燃〟。才能を開花させたはずの背番号29がどう巻き返していくのか見ものだ。