これも超危機管理術の一環か。巨人では新型コロナウイルスに感染した丸佳浩外野手(31)ら4選手が一気に離脱。原辰徳監督(62)の手綱さばきがいっそう注目される一方で、ひそかにコーチ陣への〝万能教育〟も進行している。セクションに特化しないマルチ化は今後の強い武器にもなりそうで――。


 6日の阪神戦(甲子園)は唐突な幕切れとなった。絶え間なく雨が降り続いた中、試合中にマウンドなどに土入れが行われること計6度。7回終了時に審判団が降雨コールドを決め、巨人は2―6で敗れた。中断もグラウンド整備も挟まない〝即終了〟の判断に、両手を大きく広げて説明を求めた原監督は「グラウンド整備してもプレーすることは難しいということだね。審判団がゲームを支配しているわけだから、それに従うしかないなというところですね」と現実を受け入れた。

 仮に試合が続行されたとしても、先発のサンチェスが3回途中6失点でKOされては苦しい展開を強いられるのは当然。加えて現在は打線の中心的な役割を果たしていた丸や中島、若林、ウィーラーを欠いた状態だ。球団独自の判断で一時隔離され「特例2021」によって出場選手登録を抹消されていた亀井、増田大、北村の3選手はこの日から戦列復帰したが、戦力ダウンは否めず、先発投手の踏ん張りがいっそう求められる。

 こうしたチーム状態にあっても、長丁場のシーズンを見据えた原監督の危機管理は着実に進行している。それはグラウンドで戦う選手に限らず、コーチ陣も同様だ。いかなるアクシデントが発生しても、指揮官の指示を正確にコーチを通じて選手に伝達できなければ、ベンチワークも成り立たない。

 開幕後にベンチの原監督の背後に立ち、すでに村田修一野手総合コーチ(40)や相川亮二バッテリーコーチ(44)の少なくとも2人がグラウンド内にサインを伝えている。また、開幕時は石井琢朗野手総合コーチ(50)が務めていた一塁コーチは、今月に入ってこちらも村田修コーチにスイッチした。

 こうした特定のセクションに特化させないコーチの〝マルチ教育〟について、球団関係者からは「コロナのような万一のことが起きた時に、誰かが欠けても誰かがカバーできるようになっていれば、多少はバタバタしても最小限に抑えられる。そういうことも見越しているのかもしれない」との見方も上がった。

 昨季は野手の増田大にシーズン前から緊急登板の可能性を伝えるなど、あらゆる事態を想定して先手を打つ熟練指揮官。どれだけ感染予防策を講じても、ウイルスはどこから侵入してくるか分からない。新型コロナ禍の終息が見えない今季も、その〝千里眼〟が大きな武器となりそうだ。