ロッテが1日の楽天戦(ZOZOマリン)で大量16点を奪い、今季初勝利を飾った。前日まで打率1割に満たなかった主砲・安田が2安打5打点とこれまでの鬱憤を晴らせば、助っ人・レアードにも待望の一発が飛び出すなど打線爆発。だが、この大勝劇を呼び込んだのは、プロ初登板で初勝利を飾った先発の本前郁也投手(23)だ。

 プロ2年目左腕は今春まで背番号120を付けていた育成選手だった。だが、石垣島での一軍キャンプ、オープン戦と結果を残し、先月14日に支配下登録。自らの努力でこの日の登板にこぎつけたのだから、メンタルは強靭のように見える。

 ところが、その素顔と言えば繊細そのもの。重圧や緊張は苦手なようで、大学時代から自身が登板する試合を観戦に来る両親には「観に来る時は言わないでくれ、って言っていた。意識するので」(本前)というほどの徹底ぶり。登板前日も「友達や恩師とも連絡はしているんですけど、結構いろんな人から頑張ってって言われて。うれしいんですけど、そういう期待がプレッシャーにならないようにやっていきたい」と控えめに語っていた。そんな気弱な23歳の初陣だっただけに、打線も奮起しないわけにはいかなかったはずだ。

 もっとも、一度マウンドに上がれば緊張や重圧を一掃。チームの連敗を止める重責があっても「1球目から思い切り腕を振ったので。焦り? なかったです」と平静を装いながら試合を作ったあたりは、大物感すら漂う。

 試合後のお立ち台でも「すごい緊張とプレッシャーがあった中で先発したんですけど。とにかく自分の投球ができるようにと思って(マウンドに)上がりました。反省する部分もあったんですがそれは次回に向けて修正していきたい」と笑みを浮かべながら話した本前。5回を投げ3本塁打を含む5安打4失点のプロ初勝利に課題は残るものの、確かな手応えは掴んだ。

 ロッテは昨季、育成から支配下登録された俊足の和田が開幕直後にブレーク。チームに勢いを呼び開幕ダッシュに成功した。今季チームは借金生活を強いられているものの、本前がその役割を担えるか。気弱だが着実に結果を残す若手左腕に注目が集まる。