今季パ・リーグの戦前予想で最も割れているのが18年、19年にパ・リーグを連覇した西武の扱いではないだろうか。

 不動の優勝候補、ソフトバンクと絶対エース・田中将大の8年ぶり復帰で一躍「ストップ・ザ・ホークス」の一番手に浮上している楽天が2強の様相を呈しているパ・リーグ。一方で、2年ぶりのV奪回を狙う西武の下馬評は高くなく、2~6位までの予想順位の中をさまよっている。

 秋山移籍後の「1、2番問題」が解決していないこと、3年連続リーグワースト防御率の投手陣にあって先発陣の質量が見劣ることがその要因なのだろうが、そもそも西武の野手陣は「自軍の先発が弱い」ことは慣れっこで織り込み済み。やはり問題は優勝した18、19年の圧倒的な攻撃力をどう取り戻すかがカギとなってくるだろう。

 そもそも西武の強力打線の特徴は1~4番の上位打線と、上位がつないだチャンスを5~7番の〝第2クリーンアップ〟が得点につなげる「二段構えの攻撃力」がその強みだった。

 つなぎの8、9番を含め、序盤から相手バッテリーにプレッシャーをかけ続けるこの2つのクリーンアップがいきなり爆発することもあれば、1巡目、2巡目と相手にプレッシャーをかけ続け3巡目となる6回以降に一気に相手を飲み込んでいく波状攻撃が特徴だった。

 当時の打線がいかにつながったかを示すひとつの指標が5、6、7番に回った満塁機の打席数に現れている。

 3番・浅村が127打点で打点王、4番・山川が次点の124打点を挙げた「18年打線」では、主に5、6、7番に入った森、外崎、栗山に計55打席の満塁機が巡り、打率4割4厘、62打点で上位がつないだチャンスを得点につなげた。

 3番・外崎が90打点、4番・山川が120打点を稼いだ「19年打線」でも、主に6番に座った中村に1シーズンで35打席もの満塁機が巡り、1人で打率5割3分1厘、4本塁打、49打点の神がかり的なクラッチぶりを発揮した。この年、5番・森、6番・中村、7番・栗山の3人には計66打席の満塁機が巡り、打率5割2分8厘、88打点を荒稼ぎした。

 ところがこの〝ダブルアタック〟は秋山が抜けた「20年打線」では機能を失い、ベースとなる3番・森がわずか38打点、4番・山川が73打点と低迷。外崎、中村、スパンジェンバーグの5~7番も満塁機が計48打席と減少し、打率2割6分5厘、31打点と攻撃力が鳴りを潜めた。

 西武の強力打線復活のカギはいかに上位の1、2番が出塁率を上げ、メインのポイントゲッターである3番・森と4番・山川が打点を稼ぐか。加えて開幕カードの並びとなるであろう5番・栗山、6番・外崎、7番・中村が巡ってきたチャンスを大量点に結び付けられるかになってくる。