楽天・田中将大投手(32)が14日のDeNA戦(オープン戦=静岡)に先発登板。5回打者19人に65球を投げ4安打1失点3奪三振の投球を見せ、あと一度の調整を挟んで27日の日本ハム戦(楽天生命)に向け順調な調整ステップを踏んだ。そんな田中将に対し、ライバル球団からは“もう一人の田中将”を警戒する声が上がっている。

 状況や相手関係を見ながらストライクゾーンの高低を巧みに使い打者を術中にハメた田中将は、自らの送球エラーで失点を喫した4回の場面でも冷静さを失わなかった。

 根気強く続く一、二塁のピンチで細川の外角を攻め続け、最後はツーシームで狙い通り6―4―3の併殺を奪い、勝負どころでの制球の確かさを見せつけた。

 田中将は「自分の中でのテーマがうまくできた。まだ完璧ではないですけど、今日は前回の反省を踏まえた投球ができたので一定の満足度があります」とコメント。

 4回の失点場面については「あのセカンド送球はいいところに投げられなかった。あのミスはもったいない。ただ、その後ズルズルいかずにスパッと切れたのが良かったと思う」と納得していた。

 石井一久GM兼監督(47)も「目的意識を持ったボールを投げていた。ピンチのところでどういうアウトが欲しいのか、そこから逆算したボールの使い方、配球ができていたので何も心配していない」と高評価。ストレートの最速は150キロながら、MLBで17年連続15勝以上、通算355勝を挙げた殿堂入り右腕、グレッグ・マダックスのような精密な制球力で相手打線を翻弄した投球に満足感を示した。

 勝負どころでは絶対に間違わないその制球力は今の田中将の投球スタイルを象徴していたが、その一方で、ネット裏のスコアラー部隊はまだあらわになっていない“もう一人の田中将”を警戒している。

 2月のキャンプから断続的に楽天を調査してきたパ・リーグスコアラーの一人は「打者の打ち気を利用してボールを動かしながら、少ない球数で試合をつくっていく技術はさすがだと思う」としながらこう続けた。

「本来の彼にはボールに魂を込めて、ハートで投げる本格派の側面もある。前回の楽天時代にそれを嫌というほど見せられてきた側としては警戒せざるを得ない。まだ調整段階にあるこの時期にストレート待ちの打者にストレート勝負を挑むような力勝負はしてくれないでしょうが今後、ピンチでギアを上げた時に今でもあのピッチングができるのかどうか。本当に見たいのはそこなんです」

 楽天が初めてパ・リーグ制覇を成し遂げた2013年9月26日の西武戦で姿を現した“もう一人の田中将”の本性。1点リードの9回一死二、三塁のピンチで栗山、浅村に対して投じた魂の8球連続ストレート勝負(結果は連続三振)が今でも技巧派の顔の裏で息を潜めているのか。

 開幕前、最後の調整登板となる次回20日の巨人戦(東京ドーム)に向け「まだ精度を上げていかないといけない部分はある。ゲームの中で今日できたこと、うまくできなかったことを整理して調整していけたらいい」と穏やかな口調で語った田中将の表情からは、読み取ることはできないが…。