〝禁断の扉〟も開かれるのか――。巨人は1日に田口麗斗投手(25)とヤクルト・広岡大志内野手(23)の交換トレードを発表。限られた選手生命を重んじ、球団内で慣例化していた「飼い殺し」の撤廃に力を入れる原辰徳監督(62)は通算36勝の8年目左腕も新天地へ送り出した。積極的な人材交流が続く中で、原巨人とあのライバル球団とのトレードも実現するのか、ひそかな注目を集めている。

 開幕まで1か月を切り、春季キャンプを終えたばかりのこの日、在京球団同士による〝サプライズトレード〟が成立した。右打ちで強打の内野手を探していた巨人と、手薄な先発投手陣を補強したいヤクルト側の思惑が一致。昨季まで主にリリーフだった田口は今季は先発一本で勝負をかけており、ヤクルトの補強ポイントにピタリとハマった格好だ。

 現状で巨人の開幕ローテは菅野、戸郷、井納、サンチェスの4人が当確で、残る2枠をドラフト1位ルーキーの平内龍太投手(22=亜大)や左腕の今村、高橋らが争う構図。ブルペン陣も新守護神候補の中川らを筆頭に戦力は充実しつつあり、田口にとってはヤクルトの方が活躍の場が広がる可能性は十分ある。

 他球団で活躍されないように球団が選手を囲い込む、いわゆる「飼い殺し」の排除にかじを切ったのが原監督だ。昨年は開幕後に4件のトレードが行われ、9月には澤村をロッテに放出し、球界に大きな衝撃を与えた。

 トレードが成立するためには、各球団のチーム状況やタイミングなども関係する。ヤクルトとのトレードは実に44年ぶりで、もはや原監督に「聖域」は存在しないようにも映る。そんな中で、ひそかに脚光を浴びているのが中日とのトレードだという。

 球界関係者は「2009年に原監督がWBCで監督を務めた時に、落合監督の中日勢が出場を全員辞退した。そういった因縁もあり、原監督には今でも中日に特別な感情があると言われています」と語る。

 両球団の間で行われたトレードは05年オフに巨人が大西崇之外野手を金銭で獲得したのが最後。その後も第2次原政権では中日を自由契約などで退団した井端弘和内野手や堂上剛裕内野手、吉川大幾内野手らを次々と獲得し、当時は「あえて中日勢を狙っているのか」ともささやかれたこともあった。

 一方で、巨人側が中日にトレードで選手を送ったのは、吉原孝介と光山英和との捕手同士の交換トレードが行われた1999年までさかのぼる。単なる偶然の産物なのか…それとも原監督の〝私情〟も絡んでいるのか定かではないが、ボーダーレス化が進む巨人と中日の間に妙な注目が集まっている。