一昨年のドラフト会議で3球団が1位指名で競合したヤクルト・奥川恭伸投手(19)が初の一軍キャンプで順調な調整を続けている。1年目の昨季は最終戦でデビューしたものの3回途中5失点。登板1試合で0勝1敗、防御率22・50に終わった。将来のエースと目される若き右腕はどんな未来予想図を描いているのか。本紙インタビューに自分の言葉で大いに語った。

 ――2年目で初の一軍キャンプ

 奥川 緊張感があって楽しいです。キャンプの最初ほどプレー以外での緊張というのは少しずつ減ってきましたけど、今も緊張感はあります。

 ――チームメートともよく話をしている

 奥川 はい。そういうところの緊張はなくなってきて、少しずつ自分を出せるようになってきました。最初は周りを見ながらやっていたんですけど、少しずつ自分のことに集中できるようになってきました。

 ――ルーキーイヤーの昨年は「モヤモヤした1年」と言っていた

 奥川 結構あっという間でしたね、1年が。いろいろあったんですけど悔しい1年だったのは間違いないですね。もう少し活躍したかったなって思いが強かったので。

 ――昨季最終戦でのデビュー登板時はずっと見ていた人たちが声を揃えて「一番悪かった」と言っていた

 奥川 自分も1年間の中で一番悪かったんじゃないかなと思います。去年のシーズンがそもそもあんまりいい投球がなかったので。その中でも一番悪かった。相手がどうこうの前に自分のパフォーマンスに問題があったのかなと思います。

 ――自分をどんな選手だと思っている

 奥川 たくさん期待されてる分、期待に応えないといけない選手だと思います。

 ――期待やプレッシャーが重くないか

 奥川 周りの期待に応えないと…とか、それがプレッシャーになっていましたけど、ドラフト1位はそういうことだと思うので。それなりに評価されてこの世界に入ってきているので、順調に成長していって、チームの顔になるような選手にならないといけない立場なのかなと思います。だからこそ、こうやってスローペースでやらせてもらったり、いろいろしてもらっていると思うので、しっかりやらないとなとは思います。

 ――目指すのは楽天の田中将大投手

 奥川 そうですね。球団だけじゃなくて球界を代表するような投手にならないといけないのかなと思います。

 ――エースになる

 奥川 はい。一番チームで勝ち星を挙げられるのは当たり前で、チームにいい影響を与えられるというか…。勝っていればもちろんいい影響を与えられると思うんですけど。オーラ、雰囲気というか、そういうのを持っていますよね? 僕はそう感じるんですけど。

 ――田中投手はどんなイメージか

 奥川 わかりやすく言うと、物語の主人公みたいな感じです。(アニメの)メジャーに茂野吾郎っているじゃないですか? その人中心で(物語が)進んでいくというか。エースと言えば茂野、みたいな感じですね。物語の主人公みたいな。

 ――そういう物語の主人公になりたい

 奥川 なりたいですね。

 ――やはり理想は先発完投か

 奥川 完投じゃなくてもいいです。しっかりいい形で後につないで、勝ちがつけばうれしいです。勝つ時もいっぱい失点して野手に援護もらって(勝つ)じゃなくて、自分でしっかり抑えて勝つのが理想です。

 ――「今日は奥川のおかげで勝てた」と言われるのがベスト

 奥川 はい。一番うれしいのは毎試合のヒーローインタビューですね。(高校時代の)甲子園でお立ち台に立つ時が一番うれしかったので。つらい時とかそういうのを考えて頑張る時がありました。

 ――控えめな印象からは意外だ

 奥川 子どものころはもっと目立ちたがり屋だったんです。だからまだその名残りがあるんじゃないですか。表面には出てないだけで、心の中にはちゃんと持ってますよ。目立ちたいなと。目立ってなんぼの世界なんで。平凡もいいと思うんですけど、波があったほうが最終的には楽しいと思うんですよ。

 ――プラス思考だ

 奥川 すごい選手はそういう上がったり、下がったりというのを経験して、すごくなっていると思います。ずっと真っすぐも面白くないなと。

 ――右肩上がりで行く可能性もある

 奥川 それはないです。落ちた時に強くなれると思うので。あんまり気にされない存在よりもいい時はおだてられるし、悪い時は叩かれるというか…それぐらいになってやっといい選手になれる気がするんですよね。

 ――田中投手もそうだと思うか

 奥川 絶対そうですよ。巨人の菅野選手とか、どこかで絶対、挫折してると思うんです。どの選手もそうだと思います。

 ――昨年は挫折

 奥川 していないですね。全然、挫折って言ったらダメですよ。去年はしんどいことはありましたけど挫折ではない。まだそのレベルでもないというか。プロの世界で戦って初めて経験するところまでまずは行きたいです。


 おくがわ・やすのぶ 2001年4月16日生まれ。石川県出身。石川・星稜のエースとして2年春から4季連続で甲子園出場し、3年夏は準優勝。その後のU18ワールドカップではカナダ戦に先発し7回18奪三振の快投を演じた。154キロの直球と切れ味鋭いスライダーが高く評価され、19年のドラフト会議では巨人、阪神、ヤクルトの3球団が1位指名。交渉権を獲得したヤクルトに入団した。184センチ、82キロ。右投げ右打ち。