ヤンキースの田中将大投手(25)が11日(日本時間12日)のマリナーズ戦に先発し、2度目の完投で10勝目をマークした。9回を6安打11奪三振2失点の快投で、防御率は2・02。試合はヤンキースが4—2で勝った。

“師匠”の目の前での好投だった。当初は前日のマリナーズ戦で岩隈久志投手(33)との“楽天エース対決”が実現するはずだったが、雨のためヤ軍のローテーションが変更になり消滅。「残念です」と話した田中だったが、その岩隈も相手ベンチから見つめる一戦で快投を見せつけた。

 2回までは「早打ち」のマ軍打線にも助けられ打たせて取る投球で1人の走者も許さない。1点の援護をもらった3回からはギアを上げ、6回までの4イニングで5連続を含む9奪三振と力の投球でねじ伏せる。7回以降も要所を締め、9回のマウンドへ。しかし2度目の完封が目前だった一死から不運な内野安打を許すと、続くカノに左中間への2ランを浴びた。しかしここから最後のギアチェンジで2者連続三振で試合を締めた。

 田中にとって楽天入団時のエースだった岩隈は特別な存在だ。「ずっとチームを背負ってマウンドに立っているところを見ていました。楽天から(マリナーズに)移籍されたときに、岩隈さんがチームの先頭に立って背負っていたものを自分も少しは感じられるようになったかなと思います」

 いざ、自身がチームを背負う存在になって実感したことの一つに挙げられるのが「ギアチェンジ投法」の必要性だ。エースはチームを勝利に導くため、最少失点で相手を抑えつつ、少しでも長いイニングを投げ、シーズンを通して先発ローテーションを守らなければならない。試行錯誤しながら、この投法を完全に確立させた昨季、田中は無敵の24連勝だけでなく、自己最高の得点圏被打率1割5分9厘という驚異的な数字を記録した。メジャーでも両リーグ唯一のクオリティースタート(6回を自責点3以内)率100%の安定感を見せている。

 昨季からここまでの活躍を支えたと言える「ギアチェンジ投法」。それを田中の目の前で実践していたのが岩隈のすごさについて田中はこんな話をしたことがある。

「ここぞという場面での力の入れ方というか、メリハリがすごいと思いますね。(得点圏とそうでない場面では)全然違う球がいっている」

 ピンチの場面では、違う投手が投げているかのように、まったく違う投球を見せる——。まさに、現在の田中の姿だ。新エースとしてチームを支えなければいけないなかで、現在の投球スタイルを考えるきっかけになったのが岩隈。いわば“師匠”ともいえる存在に恩返しともいえる投球だった。

  田中の話「全体的にはまずまず。制球が特別良かったとは思っていないが、球数を抑えて投げることができた。(完封を逃す被弾については)あの球をあそこの方向にホームランされる経験が今までなかった。“失投ではない”と、すぐ切り替えることができた」