沖縄・宜野座キャンプ第3クールを終えた阪神で矢野燿大監督(52)に気になる〝変化〟が表れている。昨年のこの時期には連日のようにメディアに発信していた「日本一になります!」「日本一になりました!」という〝V予祝〟を行わなくなったのだ。

 練習終了後のテレビ会見でも、指揮官の口から「日本一」というフレーズが出てきたのは指折り数える程度。キャンプイン前日の全体ミーティングでお手製の「日本一達成」の仮想スポーツ紙を持ち込み「日本一になりました!」と話術でナインを鼓舞した昨年から一転して、今年は静かに選手の調整ぶりに関する談話を発信することに専念している。

 一体、どんな心境の変化があったのか? チーム事情に詳しい関係者は「やはり去年2位とはいえ、優勝した巨人にあれだけのゲーム差(7・5差)をつけられたわけだしね。今は発言よりも徹底的にチーム力を整備して、ということ。一喜一憂しない代わりに、結果こそが全てという思いは去年よりも強いと思う」と指揮官の思いを代弁する。

 プラス思考一辺倒から慎重派路線へとシフトチェンジした理由は様々ある模様だが、期せずして勝負の年への〝手応え〟を感じ取れるうれしい出来事も起きた。今キャンプ第2クールで藤浪晋太郎投手(26)が行った練習開始前の声出しのスピーチだ。「日本で一番高い山は?(富士山)湖は?(琵琶湖)」と同僚やコーチに質問し、回答をもらった後に「では、2番は?」。誰も答えられずいる中で藤浪は「皆さん2位は知らない。そういうことです。1位にならないと意味がない。勝ちきらないと意味がないのです」とやったのだ。

 大喝采だった藤浪のスピーチは矢野監督にも大いに刺さった。「何が良かったって? 朝の声出し」と指揮官は、迷わずその日のキャンプ恒例の「カッコいい大賞」に藤浪を選出したほどだ。

 悲願の日本一達成は、やはり選手たちがその気にならないことには始まらない。改めてそのことを再認識した矢野監督は引き続き沈思黙考を貫きつつ、ナインによる自発的な「日本一」への決意表明を待っている。