理論派のジレンマを破れるか――。今季から15年ぶりに古巣復帰した巨人・桑田真澄投手チーフコーチ補佐(52)の“ある対応力”に大きな注目が集まっている。6日から宮崎春季キャンプでの指導を本格化させた同コーチは連日の「桑田塾」を開講。経験と研究に裏打ちされた“桑田理論”は誰しもが認めるところだが、一方でチームを含めた球界内から「理論が強すぎて選手が戸惑わないか」との声も…。

 宮崎キャンプでの指導を開始して2日目となった7日も、桑田コーチは選手への積極的な指南を続けた。前日6日に明かした「投球後のマウンド上に残った足跡を見て調子の良しあしを判断する方法」をヤングGへさっそく伝授。この日ブルペン入りした桜井が「『左足の着く位置が昨日は若干左にずれていたが、今日はいいところに着いていた。その感覚を忘れずに』と(助言された)。踏み出し位置をそこまで細かくこだわることはなかったし、そこが大事な場面でいい投球ができる要因になる思う」と感服するなど、早くも“桑田イズム”は浸透しつつある。

 一方で、球界きっての理論派とされる桑田コーチの考えが、時に選手たちに戸惑いを与える可能性についてを指摘する声もある。7日に放送されたTBS系「サンデーモーニング」に出演した元巨人監督・堀内恒夫氏は「理論的なコーチが来たもんですから。どうなんでしょうか、選手が戸惑わなければいいでしょうけど」と懸念を示しつつ「選手の力をよく見極めて、その力に手助けするという形がベストではないかと思いますよ」と語った。

 実際、同様の意見はチーム内からも聞こえてくる。あるチーム関係者は「桑田さんのような理論派の野球人もいれば『習うより慣れろ』の実践派もいる。タイプの違う選手を納得させる指導を行うのはかなり大変な作業です。そこが最初の試練になるのではないでしょうか」と、選手それぞれの個性に合わせた指導の難しさを指摘した。

 選手の間からも率直な声が出ている。別のチームスタッフによれば「選手の中には『自分のような理論派じゃない人間が桑田さんの言葉をどう受け止めればいいのか』と言う人間もいます。過去に理論派の指導者から自身の考えを押し付けられたトラウマを持つ選手も少なくないので、そういった選手たちとどう向き合うかがカギになるかもしれません」。“理論派のジレンマ”とも言える難しさをどう乗り越えるかが、今後の焦点となりそうだ。

 桑田コーチは「僕が現役時代、『なぜ』を説明してもらって、納得できなかったらやりたくないタイプだった。『なぜならば』を説明してあげるのは大事にしている部分ですね」と選手との「対話」を重視することを明かしていた。タイプの異なる「理論派」と「実践派」に“桑田理論”をどう適応していくのか。その対応力に大きな注目が集まる。