【赤坂英一 赤ペン!!】毎年、12球団が一斉にキャンプインする2月は球春到来。取材する私の気分も盛り上がるものだが、今年は明るい話題を探すのに苦労しそうだ。

 そうした中、気になったのが、巨人・菅野、坂本、丸らベテランS班の東京ドームキャンプである。これは新型コロナ禍の影響で沖縄入りを遅らせたための措置。初日からわずか4日間ながら、巨人が東京ドームでキャンプを行うのは1988年の開場以来初めてだ。

 原監督の言うように、屋根と空調のあるドーム球場なら、練習が天候に左右される心配はない。妻や子供のいる選手には毎日自宅から通えるメリットもある。チーム内では早くも「もし主力に好評なら来年以降も慣例化されるのでは」という声も上がったと聞く。

 この本拠地キャンプ、巨人が追いつき追い越せと必死になっているホークスに前例がある。まだ親会社が前身のダイエーだった94年、2月後半の第2次キャンプを福岡ドーム(現福岡ペイペイドーム)で行った。

 ダイエーは福岡ドーム移転1年目の93年、最下位に低迷した。前年まで平和台、南海時代は大阪球場と、狭い球場を本拠地としていたため、選手たちが当時日本一だった福岡ドームの広さに対応できなかったのである。

 そこで当時の根本監督は、選手も首脳陣も広さに慣れることが必要だと判断。ダイエーも地元のファンを開拓したいとの思惑から大人300円、子供200円の入場料を取って約2週間の本拠地キャンプに踏み切った。

 本拠地で練習したかいあってか、94年は最下位から4位に浮上。その後も時間はかかったが、王監督(現球団会長)の下で99、2000年とリーグ連覇して常勝チームの礎を築いた。

 さて、開業33年の東京ドームもまた、そろそろ生まれ変わるときにきている。巨人は昨夏、23年の開幕に向けて100億円規模の設備投資を行うと発表。さらに今年、三井不動産のTOB(株式公開買い付け)が成立し、東京ドームが完全子会社化されることも明らかになった。その三井不動産は東京ドームの全面的建て替えの検討も始めているという。

 それならこの先の数年間、巨人は様変わりする本拠地で期間限定のキャンプをやったらどうか。新型コロナ禍が落ち着いて、94年のホークスのように有観客が可能になればファンで大いににぎわうはず。当分そんな夢でも見ながら宮崎や沖縄で取材を続けるとしよう。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。