3年目を迎えた矢野阪神の沖縄・宜野座キャンプで、注目はドラフト1位・佐藤輝明内野手(21=近大)だ。球団のおひざ元、兵庫県西宮市出身というだけなく、昨年のドラフトで4球団が競合した逸材でもある。

 それだけに、例年なら評論家各氏が〝話題の新人〟目当てに大挙してキャンプ地を訪れ、打撃ゲージ裏から熱視線を送ったことだろう。しかし、今年は新型コロナウイルス感染対策のため、そうもいかない。阪神に限ったことではないが、今キャンプでは評論家諸氏に対しても事前申請や人数制限が設けられているため、OBによる〝怪物詣で〟は極端に減る見込みだ。

 寂しい話ではあるが、あるパ・リーグ球団出身のOBはこの状況が佐藤輝にとってプラスに作用すると言う。「今回のキャンプは2年目以降の選手には『何か気分が盛り上がらないな…』とか違和感が伴うだろうけど、新人たちにはプラスに働く。特に巨人や阪神のような人気球団だったり、注目度の高い新人にとってはね」

 いくら大物ルーキーでも1年目のキャンプでは独特の緊張感を感じるもの。先輩たちのレベルの高さや観客の視線を感じながらの練習に驚きや戸惑いもあるだろうし、見るもの全てが初めてで自然と力が入ってしまう。しかし、今年は「無観客だし、グラウンドで評論家や先輩OBなどの挨拶に忙殺されたりとかもない」(前出OB)。全てが初体験の新人にとっては多少なりとも「気を使う要素」が減ることで、その分だけ自分の鍛錬に集中できる環境に近づくというわけ。

 佐藤輝は先月28日から先乗り自主トレでキャンプ地入りし、フリー打撃では中堅にあるスコアボード直撃の推定飛距離140メートルの特大弾を放つなど、キャンプ前の調整は順調だった。注目されるのは開幕からでも遅くない。虎のドラ1は静かに牙を磨いていく。