キューバからやってきた巨人の新助っ人フレデリク・セペダ外野手(34)が、15日のヤクルト戦(東京ドーム)に、いきなり「4番・左翼」でスタメン出場を果たした。チームは4―11の完敗を喫したが、来日初安打&初打点を記録するなど上々のデビュー。鋭い打球を放ったキューバの至宝のバットからは“あの選手”との意外な関係も判明した。

 練習前からお祭り騒ぎだった。50人を超える報道陣とテレビ各局のカメラが待ち構えるなか、この日の主役は午後2時半すぎにグラウンドに登場した。やや緊張した顔でセペダがフリー打撃を始めると、報道陣や関係者の視線は一点に集中。そして試合では、いきなり「4番・左翼」で先発出場した。

 球団創設80周年のメモリアルイヤーに「第80代4番打者」として巨人での第一歩を記すと、その看板に恥じない打撃を披露した。初回の初打席こそ二ゴロに倒れたが、東京ドームが大歓声に包まれたのは3回二死二塁の第2打席だ。ヤクルト先発・木谷の5球目、内角低め直球を強振すると鋭い打球が右前へ抜けた。二塁走者の坂本が生還して来日初安打&初打点を記録すると、硬かった表情がようやく少しだけ緩んだ。

 注目のデビュー戦は3打数1安打1打点。原監督も「非常に存在感があった」と高評価したキューバの至宝を巡っては、意外な素顔も明らかになった。試合前に同僚ナインたちが目を留めたのはバットのグリップ。そこには「H6」と記号が彫られていた。

 Hとは「ホークス」の頭文字で「6」は背番号を指す。とはいっても、ソフトバンクで現在6番をつける吉村のバットではない。巨人関係者によれば「いつ、どこでもらったものかはわからないけど、どうやら多村(現DeNA)がホークス時代に使っていたバットらしいんだ」という。

 キューバ球界に詳しい関係者によれば、同国選手たちの間で多村は“レジェンド”として尊敬を集めているそうだ。きっかけは2006年の第1回WBC。多村は同大会でチームトップの3本塁打、9打点の好成績を残し、キューバとの決勝戦でも2打点を挙げて初優勝に貢献した。その印象がキューバ選手には今も強く残っているのだという。この日「巨人のユニホームを着られて興奮している」と話していたセペダも、実は熱烈な“タムラ信者”の一人だったのだ。

 来日からわずか4日で巨人打線の中核に座ったキューバの英雄は「ヒットを1本打つことができて、打点も挙げられてうれしい気持ちとホッとした気持ちがある」と振り返った。その穏やかな表情からは巨人のユニホームを身にまとった喜びが伝わってきたが、一方では「タムラに会える」ということも、日本行きの決め手になったのかもしれない。