これはもう“野戦病院”どころじゃない。ヤクルト二軍の投手陣が「現代の蟹工船」と化している現状が、本紙の取材で明らかになった。「蟹工船」とは小林多喜二の小説で、オホーツク海でカニを漁獲し、船上で缶詰に加工する船が舞台。船員たちは劣悪で過酷な労働を強いられ、次々と倒れていく…という今で言うブラック企業の決定版とも言える内容。それほどまでにヤクルト二軍投手陣は酷使されているということなのか。

 今季もヤクルトはエースの小川が右手骨折、館山が右ヒジ手術、バーネットが左ヒザ靱帯部分断裂、由規が右肩手術、村中が腰の張り…などなど、一軍投手陣に故障者が続出している。呪われているといってもいいほどだが、二軍の投手陣にも故障者は続出しており、実に10人以上がリハビリ組というとんでもない状況に陥っている。親会社が健康食品も販売しているだけに、チーム内には「いつ本社から怒られるか…」と恐れおののく声も上がっているほどなのだ。

 そのため、故障を抱えていない健康な投手が、プロ野球としてはありえないほどのフル回転となっているという。ある二軍スタッフは頭を抱えながらこう話す。

「何はともあれ投手の数が足りない。先発は中4日で回すのがやっとでリリーフも常に4人前後しかいない。だから、先発投手はどんなに打たれても何球投げても6、7回までは投げないと試合にならない。リリーフも連投、連投…。もう蟹工船だ…」

 メジャーも中4日だが、それは100球という制限があってのもの。しかし、ヤクルト二軍には球数制限などはない。実際、二軍の投手陣は「やばいっす…」とうつろな表情で口を揃える。これでは故障者が故障者を呼ぶ悪循環に陥り、若手が育たない負のスパイラルが続いてしまうのも無理はない。

 こうなると分かっていれば、せめて昨季のドラフトで育成選手の一人でも獲得しておけばよかったのかもしれないが…。それを言っても、いまさら後の祭りだ。

 さらに二軍の投手陣を絶望に叩き落とすのが、一軍の状況。この苦しい“ファーム地獄”を抜け出し昇格しようにも「上も投手陣が手薄。先発が5人しかいないんですから。上にいっても(職場環境が)厳しいことに大して変わりないですよ」(前出のスタッフ)というわけだ。

 ヤクルト二軍の若者たちがこの“蟹工船”から抜け出す日はいつか来るのか。