ピリッと初始動――。ソフトバンクの小久保裕紀ヘッドコーチ(49)が15日、福岡・筑後市のファーム施設を就任後初めて視察。育成練習や新人合同自主トレなど約6時間にわたって、精力的に情報収集した。

 12球団屈指の練習環境を再確認して「ぜいたくすぎる。ここでうまくならないなら、日本のどこに行ってもうまくならない」といきなり小久保節を炸裂。常勝軍団の未来を担う若鷹に強烈なメッセージを送り、初仕事からカラー全開だった。

 引退以来9年ぶりのホークス復帰。「指導する立場で選手たちと接する時にどう育っていくか分からないけど、出会う人によって変わる選手もいる。そういう点での責任感とか重大さを感じた」。自然と野球人の血が騒ぎ始めた様子だった。

 早速、新人に「野球界でやってきた先輩としてアドバイスを2点だけ」と金言を送った。1つは「メモを取る習慣。人間はすぐ忘れるので。今やっていること、コーチから、監督から言われたこと、自分が気付いたことをメモする習慣をつくろう」。成功するヒントを逃さず、さらに成果を出すためのインプットの重要性を説いた。

 2つ目は「空いている時間をいかに使えるか。24時間、管理されているわけではなくて、同じ寮生活でもプライベートな時間がある。その時間をいかに自分のために使えるか。そういう選手が成功する」。バットを振ることも大切だが「本を読んだり、自分の知らないことを仕入れようとか、体の手入れをしようとか。細かいことを積み重ねた人が勝つ」。指導者として本気でぶつかり、手を差し伸べるが、最後は自分次第――。台頭を心待ちにするからこそ、言葉には熱がこもった。

 目を輝かせて聞いていたドラ1ルーキーの井上朋也内野手(17=花咲徳栄)は「言葉をいただいて『やってやろう』という気になった」と心酔。ピリッとする空気の中で、他の新人たちも背筋を伸ばし、横一線からの競争に思いを新たにした。

 就任時に表明した「僕が入ってピリッとなればいいかな。ちょっと怖い存在でいたい」との言葉通り――。常勝の礎を築いた男が、新風を吹き込む。