最も恩恵を受けるのは背番号18の後輩か――。仰天人事で原巨人に入閣した桑田真澄一軍投手チーフコーチ補佐(52)には高卒3年目右腕・戸郷ら若手投手の底上げが期待されている。ただ、メジャー挑戦から一転、残留となった菅野智之投手(31)にとっても理論派レジェンドOBから得るものは多そうだ。

 桑田コーチは12日の就任会見で、菅野について「非の打ちどころのないピッチャー。でも伸びしろはあると思っていますので、彼の潜在能力を引き出すことができたらうれしい」と明言した。これには球団関係者も大歓迎で「今の菅野に対してあれこれ言える投手コーチはいないのが実情。菅野に注文するにはそれだけの実績がいる。桑田コーチがそういう存在になってくれれば菅野はさらに成長できる」との声も上がっている。

 菅野が入団した2013年から18年まで主に投手コーチを務めていたのは「平成の大エース」と呼ばれた通算180勝の斎藤雅樹氏だった。プロでの実績や存在感でも菅野にとっては目標の一人で、昨年8月に開幕投手から8連勝で斎藤氏の記録に並んだ際には「まだまだ足元にも及ばない」と話したほどだった。

 代わって19年から〝上司〟となったのは宮本和知投手チーフコーチだ。原監督が「彼(宮本コーチ)の功績は非常に大きい」と絶賛するように投手陣を鼓舞してリーグ2連覇に尽力した。菅野も「宮本コーチを胴上げしたい」と慕っており、巨人残留を決めた際もすぐに国際電話で同コーチに報告している。

 ただ、宮本コーチ自身が「選手をやる気にさせるのが自分の仕事」と認めるように厳しく指導するタイプではない。特にエースには調整も本人に一任する〝大人扱い〟。士気とコンディション調整に力を発揮するも、さらなる成長を求めるトップクラスには物足りない部分もあった。

 昨季の菅野は最多勝と最高勝率の2冠に輝き、リーグMVPと無双の働きを見せたが「パフォーマンスとしては正直、いい時もあれば悪い時もあるっていう波もあったと思いますし、まだまだ伸びシロというのは感じてやっているので」と満足はせず、さらなる高みを目指している。

 桑田コーチは巨人のエースナンバーである背番号18を20年間背負い、1987年に沢村賞を獲得するなど通算173勝を挙げた。沢村賞を2度獲得し、通算101勝の菅野にとって目標とする投手の1人でもある。現役晩年のメジャー経験に関する話も聞いてみたいところだろう。すでに桑田コーチは「メジャーを目指したことで彼の心境はすごい複雑だと思う。1年終わったら新たな挑戦をしてもらえたら。なぜかというとメジャーのマウンドは素晴しいものがありますので、経験することでさらに彼が飛躍できるんじゃないかなと思っています」とのエールも送っている。

 一見、国内でやり残したことがないような菅野にとって桑田コーチの経験や言葉は吸収しておくべきエキス。どんな〝化学反応〟が起きるのか楽しみでもある。