菅野には退路を断ってメジャー移籍に臨んでほしかった

2021年01月12日 14時00分

菅野には不退転の決意でメジャー移籍に臨んでほしかった

【赤坂英一 赤ペン!!】ポスティングシステムでの大リーグ移籍を断念した巨人・菅野が10日にオンライン会見で心境を語った。「いろんな話をする中で、100%自分の中で納得できるものがなかった」のだそうだ。

 また、代理人ジョエル・ウルフ氏が話していたように「条件面でいろんなところに似たようなオファーが多かった」と指摘。交渉を求めてきたメジャー球団同士が舞台裏で談合し、菅野の条件を引き下げようとしたのではないか、という不信感も抱いていたらしい。

 米メディアでは、巨人から毎年契約破棄を要求できる4年のオプトアウト契約を提示されていると報じられた。順調なら今季中に海外FA権を取得することもあって、再挑戦する意向も表明した。

 メジャーも新型コロナ禍で先行きが不透明で、今年移籍しても肝心の試合が行われなかったら元も子もない。そういう意味では非常にクレバーな判断だったが、何かビジネスライクな印象も受けた。

 巨人からメジャー移籍した先輩・上原浩治氏は昨年末、ネットで「ポスティングはメジャーへの移籍が大前提だ」と独自の見解を表明。「どんな状況でも、条件でも移籍をする。その覚悟は必要」と、後輩の菅野に不退転の決意を求めていた。

 ところが、一転残留の結論に「必ず行くからポスティングって思ってたんだけど、もう違う考えなんだね」とツイート。これは時代の変化であるとも感じているようだ。

 その上原氏は巨人時代の2004年、ポスティングでのメジャー移籍を球団に直訴。当時はわがままと批判され、09年にオリオールズへFA移籍するまで様々なあつれきや紆余曲折を経験している。

 上原氏の時代までは、メジャー移籍、イコール巨人との決別と受け止められていた。その最たる例が02年にFAでヤンキースに移籍し、巨人で最初の前例を作った松井秀喜氏だ。「裏切り者と思われるかもしれません」という記者会見でのセリフは今も語り草だ。

 しかし、そうして退路を断ったことが、松井氏や上原氏がメジャーで大活躍する原動力の一つになったように思う。球史をさかのぼれば、パイオニアの野茂英雄氏は1995年、日本球界を敵に回し、引退覚悟で海を渡っている。

 菅野がメジャーでも大投手を目指すなら、先輩たちのように退路を断って臨んでほしい。もうそんな時代ではない、と言われればそれまでだが。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。