【取材のウラ側 現場ノート】広島・大瀬良大地投手(29)が恩人との〝再会〟を切望している。

 佐々岡監督から2021年の投手キャプテンに指名された右腕は「肩書きが正式に決まるとまた気持ちも全然違う。より一層頑張っていきたい」と意気込んでいるが、一方で「あの方は今どうしているのか…」と心に引っかかる人がいるという。

「あの方」とは広島入りの〝きっかけ〟を作った人物のこと。プロ入り前の2013年10月13日、九州共立大野球部の仲間と広島旅行中だった大瀬良は、マツダスタジアムを訪問。その日はカープが初めて進出したCS第1戦の阪神戦(甲子園)の日で、球場ではパブリックビューイングが開催予定だった。

 しかし、事前に配布された整理券を持っておらず観戦をあきらめ帰途に就こうとしたところ、見ず知らずの男性が現れ「余っているからあげるよ」と整理券を譲り受けた。これで球場入りした大瀬良は広島の戦いぶりやファンの熱烈な応援に感動し、広島入りを熱望。運命に導かれるかのようにドラフト本番では田村スカウトに引き当てられ…とファンには有名な入団までの感動的な話だが、大瀬良にとっては〝終わった話〟ではないようだ。

「あのとき整理券をもらって球場に入ることができたからこそ『ここで投げたい』という思いが強くなった。あの出来事があったから今の自分がある。できるならお礼を言いたい」というのだ。

 普通なら過去の話として済ませていてもおかしくはないが、心優しく義理堅い大瀬良らしい〝悩み〟だと感じる。コロナ禍により人との対面は難しくなるばかりだが、いつの日か右腕がお礼を言える日が来てほしいと思う。

(千葉教生)