【復刻!ノムさんのボヤ記(28)】今年2月11日に亡くなった、野村克也さんに感謝と敬意を込め、楽天監督最終年となった、2009年シーズンのボヤキを一挙公開! レギュラーシーズン最終戦後、今季限りの退任が明らかに。クライマックス・シリーズ(CS)を前に気持ちは沈み、ボヤキっぱなしだったノムさんだったが…。1年間完全密着で抽出した珠玉のボヤキの数々を、当時を懐かしみながらお楽しみください。

 ◆10月13日 練習日

 こんな大事な時期に解雇通告を受けるっていうのは前代未聞だね。選手には動揺するとイカンから言わなかったけど、そういうことを(フロントは)何にも考えていない。人間として義理人情であるとか、日本人独特の文化を全く感じない球団。今は非常に情けなく、最悪の状態です。こんな状態でクライマックス臨んでいいのか、なかなか気持ちの整理がつかないんですよ。「契約だから」で片付けられてるけど、非常に不愉快な気持ち。「空は秋晴れ、心は丹後の曇り空」ってとこか。

 しかし、講演生活はいやだな。そう言っても遊んでるわけにもいかんしな。クイズ番組? 断るよ。そんなん出たら恥かくだけ。仙台の放送局で解説者をやって毎試合、楽天の悪口ばっかり言うってのはどうだ?

 こんな暗い雰囲気で大試合するの、初めてや。なんか憂さ晴らししたいな。藤原紀香でも連れて来い! それにしても全然、女子アナは来ないな。どうしたんや?

 ◆10月14日 練習日

(前日CM撮影に参加)照れくさいな~。セリフが多すぎるんだよ。何回も言わされたんだけど、途中で嫌になっちゃって「タレント代えろ」って言ったんだ。(撮影は)2時間半くらいやったかな。「スポーツは…スタミナとナントカ…バランスが命」とか言ったけど、セリフ忘れたな。しかし、なんでオレなんだ。イケメンいっぱいいるやないか。

(この日の夜)選手会で決起集会か。いいね、涙が出るね、うれしくて。選手がそれくらい燃えてくれてるとな。ありがたいこっちゃ。やるのは選手だからな。

 ◆10月15日 練習日

 最後の最後でイヤな経験させてくれるよ。こんな心境で試合なんかしたことなかったよ。「腑抜け」って言葉あるよな。腑抜けの心境や。どっと疲れが出た。54年分の疲れや。まさに腑抜けだよ。まったくヤル気がせんわ。いや、腑抜けじゃなくて抜け殻かな。本当は(フロントにとっても)休養するのが一番いいんだろうな。休養届。それもケッタクソ悪いし、オレにも意地がある。「意地シリーズ」や。でもフロントには無駄な抵抗だな。そう思うとアッタマ来るな。

 ◆10月16日 CS第1ステージ ソフトバンク戦(Kスタ宮城) 試合前

 おっ、今日は女性が多いな。見かけない女性が多い。(ふと近くの地元女性リポーターを見て)ここら辺は見飽きた女性ばっかりだけど…。口が悪い? だってデートに誘ってくれないから…。

(シダックス監督時代の元教え子のソフトバンク・森福允彦、森本学があいさつに訪れた)

 お前ら出番ないやろ。まあ、お前らが出てくるようじゃ楽天の勝ちやな。顔が悪いうえに印象まで悪くするなよ。ま、頑張れよ! 来年取材に行くからよ。お前のキャンプ地ドコや? 宮崎か。なら行くわ。そっちより、夜の宮崎だけどな。

(試合は11―4で勝利)

 まず1勝! あと1つが大変だ。すんなりと行ってくれりゃあいいけど、すべてはマー君に託して。やってくれるでしょう。ミーティングで泣いたのが効いた? 一生懸命やっていい結果出してクビっていうのが悔しくてな。契約、契約って、人間のふれあいっていうのはないのか、血も涙もないってことでしょ。情けに訴えるつもりはないけどな。

 ◆10月17日 CS第1ステージ第2戦

(試合はソフトバンクに4―1で勝ち、最終ステージ進出。試合後にファンへのあいさつを終えて)

 あいさつ、下手だね。言いたいこといっぱいあったんだけど、うまくまとめられなかった。仙台のファンは日本一。マナーがいいし、熱心だし、我慢強い。凡プレーやミスが出ても罵声とかが全然ない。日本一になるまであと8勝? マジック8か、遠いな。一歩ずつ進んでいくしかないな。

〈毎週日曜「東スポWeb」掲載〉