楽天フロント ノムさんを黙らせるために名ばかり「名誉監督」を打診

2020年12月25日 11時00分

【球界平成裏面史・楽天09年編(6)】球団創設初のAクラス入りどころか、平成21年(2009年)の楽天は2位に大躍進してクライマックスシリーズ(CS)の地元開催権まで得た。その余勢を駆った野村克也監督は10月9日の試合後に「楽天イーグルスは好きだけど、楽天球団は大嫌い!」とブチ上げて“ノムさん劇場”は最初のヤマ場を迎えた。

 しかし、事態は少しずつ変わっていく。球団が「名誉監督」のポストを用意していると通信社が報道。その報に合わせるかのように、球団は10月11日のレギュラーシーズン最終戦前に解任を正式に告げられていないとボヤいていたノムさんと島田亨オーナー兼球団社長との直接会談を設定した。試合前のベンチにはマスコミも殺到。6台のテレビカメラ、20人以上のスチルカメラマンが指揮官の登場を待った。

 ノムさんが姿を見せたのは対戦相手だったソフトバンクの練習終了5分前。穏やかな表情でベンチに現れると島田オーナーとの会談について「俺も悪かったんだけど(今まで)『早く知らせてくれ』と言ったけど『クビなら早く言ってくれ』と言わなかった。付け加え忘れた。言葉が足りなかった」と、なぜか球団フロントへの“おわび”から入った。

 その後、島田オーナーが会見。ノムさんに今季限りの解任を正式に通達した上で「名誉監督」就任を打診したことを明かしたが、その内容は周囲とノムさんを黙らせるための“応急措置”としか思えないものだった。

 そもそも名誉監督の具体的な業務内容がない。島田オーナーも「何も決まっていない。基本的に象徴的な存在。具体的に何をやるというのはないと思う」と、あっさり認めた。さらにノムさんいわく「『よそのユニホーム着ていいのか』って聞いたら『いいです』って。そりゃおかしいんじゃないのかって思ったんだけど」。

 トップ会談では、ノムさんの愛息である克則バッテリーコーチの処遇についても話し合われた。ノムさんによれば「米田(球団代表)が『育成の方で』と言っている。まあ、二軍どころか三軍のコーチだよ」。かつていたポストとはいえ、一軍バッテリーコーチを育成コーチに下げてまで球団に在籍させる人事も苦し紛れに映った。父親を黙らせるための「人質」と解釈されても仕方ないものだった。

「名誉監督なんて、ファンに対するエクスキューズ。ファンの騒ぎを鎮めるための戦術だ」と語ったノムさんに対して、島田オーナーは「そう思われるのも致し方ないと思う」と反論しなかった。そんなトップの姿に、球団関係者も「オーナーはそう受け止められるのも承知で言っている。フロントもそれを想定していたし、そこまでバカではない。でも、周りからそう思われてまで『名誉監督』をお願いするということが、我々の偽らざる敬意の表れなんです」と代弁した。

 余談だが翌年、退任後のノムさんはバラエティー番組に出演。名誉監督の打診は「暴露本」の出版を知ったフロントがあわてて用意した肩書だったと明かした。結局「出版差し止め」とはならず「あ~ぁ、楽天イーグルス」の書名で出版されたが、本人いわく、その内容は球団に配慮し、大幅に書き直されたものだという。

 まさにドタバタ。2位に躍進した現場がないがしろにされるという、あり得ない状況でレギュラーシーズンが終了した。ノムさんは「名誉監督」就任の返答を保留したままソフトバンクとのCS第1ステージへの準備に入ることになったが“ノムさん劇場”のクライマックスはまだ先。それどころか、さらなる“どんでん返し”が待っていた――。

=続く=

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