今季パ・リーグMVPに輝いたソフトバンクの柳田悠岐外野手(32)が23日に福岡市内の球団事務所で契約を更改した。昨オフ変動制の7年契約を結び、来季が2年目となる年俸は4000万円アップの6億1000万円プラス出来高。2002年の巨人・松井秀喜の日本人野手最高年俸に並んだ。今後もミスターフルスイングが最高年俸を引き上げていくことになりそうだが、このオフ、柳田を超える男が誕生していた可能性もあった――。 

「球団からは『よくやってくれた』と言っていただき、シーズンの数字を評価してもらった」と晴れやかな表情だった。今季は119試合に出場して打率3割4分2厘、29本塁打、86打点と主要打撃部門いずれもリーグトップ3に入る好成績で、最多安打のタイトルを獲得。球界の顔でもある32歳は「今年は(コロナ禍で)ファンの皆さんのためにテレビ越しでもいいプレーを見せたいと思っていた。すごくいい1年になった」と使命感を漂わせた。

 今季は新型コロナ特例による120試合制。球団は「143試合には換算しない」(三笠GM)査定方法を採用した。本塁打や打点など加算される成績が試合数減少で伸び悩んだため、4000万円の昇給にとどまったという側面もある。

 NPBの顔である柳田の「対価」に出し渋る球団ではない。投手を含めた日本人最高年俸は2004、05年の佐々木主浩(横浜)の6億5000万円。今の柳田なら更新は時間の問題だろう。ただ、生え抜きの柳田が超えていくのが美しいストーリーだが、鷹にちっぽけな〝聖域〟はない。

 今オフ、ソフトバンクは調査を続けてきたヤクルト・山田哲人内野手(28)の国内FA権行使に照準を合わせ、万全の準備を整えていた。補強ポイントである右打ちの内野手で若くして「トリプルスリー」3度の実績と華を持ち合わせた球界のスター。結果はFA権を行使せずヤクルト残留となったが、縁があればマネーゲームの末に最高給選手誕生の現実味は大きかった。

 かねて後藤芳光球団社長兼オーナー代行(57)は年俸バランスと正当価格について、こう語っている。「僕らには信じるやり方がある。頑張っている選手にはマーケットプライス(市場価格)を提供すべき。(例えばビジネスで)上場企業の価値が100億円だとしても、本当に欲しかったら130億円を提示しないといけない」。鷹が山田を欲した真意の一つには「球団経営のマイナスを今後取り戻すには、強いチームがあり続けてこそ。強くなければ多くのファンはついてこない。強くあり続けるには、3~5年先を見て強さの土台を築ける絶対的な選手が必要。山田選手はその一人」(球団フロント)とコロナ禍で経営的打撃を受けた今だからこそ、投資に消極的になるべきではないとの考えもあった。

 選手年俸については生え抜き主義などの〝聖域〟が存在しない鷹。夢の10億円プレーヤーも含め、いずれ球界最高年俸選手が誕生するだろう。

(金額は推定)