ハタチの若武者が大成するための鍵とは――。今季はチーム2位の9勝を挙げてリーグ2連覇に貢献した巨人・戸郷翔征投手(20)が、21日の契約更改交渉で300%増の2600万円でサインした。背番号が「13」から「20」になる来季は、メジャー移籍濃厚なエース・菅野の穴を埋める活躍が期待される。そのためにもGのレジェンド投手と共通する〝長所〟を磨く必要があるという。


 金銭面での評価と同時に大きな期待をかけられた。球団から新背番号を告げられた戸郷は併せてこう声をかけられたという。「シーズン終盤の失速が少し響いたのかな、と。来年は菅野さんがいてもいなくても柱になると思うから、15勝目指してくれ、と言っていただきました」

 2年目の今季は8月終了時で7勝2敗、防御率1・90と大ブレーク。しかし、9月以降はスタミナ切れで失速し、9勝6敗、防御率2・76で2桁勝利はお預けとなった。

 菅野がメジャー移籍したら、来季は戸郷、サンチェス、FA加入した井納を中心とした先発ローテになる。次世代のエース候補として一本立ちは至上命題で、チーム関係者の一人は「前半戦で見せた、あの投げっぷりをシーズン通してできるかが鍵」と言う。

 この「投げっぷり」とは具体的に何なのか? かつて原監督は「打者を見ながら『こういうふうにしようかな』と、かわしみたいになるのは決して良くはならない。打者って『攻撃』とは言うけど受け身。投手は受け身じゃない。最初っから自分の好きな時に投げられる。ゴルフと一緒ですよ。自分の間合いで、ここって部分で動く。これがすごく怖い。打者は『いらっしゃい』って受け身の中で冷静にとらえられるか。投手というのは攻撃性がないと」と話していた。

 前出関係者が「あの投げっぷり」と称したのは指揮官が語った「定義」に加え、通算180勝を挙げたOBで「平成の大エース」と呼ばれた斎藤雅樹氏と共通する類いまれなポイントがあるからだという。

「古参のスタッフが言うに、多くの投手は捕手からサインが出た時、少し引くというか、たじろいだ雰囲気を出すそうなんだけど、戸郷はサインのやり取り中、グッと前に出て、マウンドから向こうっ気を出してくる。これを一番出していたのが当時の斎藤さんだったと」。体力だけでなく、この「気」を発し続けるだけのメンタル面のスタミナも本格化には欠かせないと指摘した。

 背番号20のイメージについて戸郷は、OBでは昨年まで在籍していたスコット・マシソン氏や、定岡正二氏を挙げる一方で、故郷の宮崎県都城市の都城農出身で通算213勝をマークしたカープのレジェンド・北別府学氏を挙げた。いずれにしても戸郷が歩むのは、斎藤氏、北別府氏が歩んだエースへの道だ。(金額は推定)