最強ドリームチーム相手に真っ向勝負!日本の〝SUGANO〟に全米が驚いた

2020年12月10日 10時00分

小久保ジャパンのエースとして存在感を示した菅野
小久保ジャパンのエースとして存在感を示した菅野

【球界平成裏面史 WBC編(4)】まさかの準決勝敗退に終わった第3回WBCだったが、小久保裕紀監督を迎えて臨んだ第4回は、日本中が久々の熱狂に包まれた。

 ダルビッシュ、前田、田中らメジャーリーガー集結の可能性。そして、二刀流・大谷翔平(日本ハム)のWBC初見参――。しかし平成29年(2017年)に入り、そのお祭りムードに暗雲が立ち込める。

 チーム事情によるメジャー勢の代表不参加(青木は出場)までは想定内だったが、前年の日本シリーズで痛めた右足首の影響で、最大の目玉だった大谷の出場辞退が春季キャンプ早々の2月3日、指揮官の口から発表された。そして、その経緯をめぐってもひと悶着起きていた。

 代表側は大谷の「投手としての調整遅れ」までは把握していたものの、日本ハムはすでに「投手としての出場辞退」を伝えていたと主張。しかも、代表側が辞退の認識がないまま、日本ハムから発信されたことで、事がややこしくなった。

 代表運営側も「正式なものは代表から発表するのが筋」と語るなど、コミュニケーション不足が表面化。結局、野手としての出場も見送られることになり、最終メンバーの登録期限(2月6日)を目前に控えた中でのドタバタ劇となった。MLB球団も注目する大谷の突然の辞退とあって、米メディアも一斉に速報した。

 いきなり大黒柱を失った状態で始まった1次ラウンド(東京ドーム)は、初戦のキューバ戦を乱打戦の末、11―6で撃破。心配された視聴率も平均で22・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と注目の高さを改めて示した。

 1次ラウンドを負けなしの3連勝で突破。2次ラウンド(東京ドーム)になると試合展開も息詰まるものに。特に3月12日のオランダ戦は延長11回、4時間46分に及ぶ死闘だった。

 バンデンハーク(ソフトバンク)、バレンティン(ヤクルト)といったNPB勢に加え、ボガーツ(レッドソックス)、スクープ(オリオールズ)といったMLBの強打者による混成チーム相手に6―6の打ち合いに。そのまま延長戦に突入した。

 試合は無死一、二塁から始まるタイブレーク制に突入した11回、中田(日本ハム)が勝ち越しの2点タイムリーを左前に運び8―6。薄氷の勝利をもぎ取った。盛り上がりも最高潮に達し、平均視聴率も25・2%。瞬間最高で32・6%(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)を叩き出し、国民の熱狂はうねりとなっていった。

 そして――。無敗のまま2次ラウンドを突破した日本代表はついに決戦の地、米国へ。3月22日、ドジャースタジアムでの米国代表との準決勝へと突入する。ここで輝きを放ち、かつMLB球団にその存在を知らしめたのが、菅野智之(巨人)だった。

 前日の公式練習中、激励に訪れた伯父の原辰徳氏(現・巨人監督)から「腕がちぎれてもいいから投げてこい!」のゲキ。これに「ちぎれないように頑張ります」と笑いを誘った菅野は、大一番を前にこう言い残した。
「内角をガンガン攻めていきたい。ホームランを打たれるなら、デッドボールを当てた方がいいくらいの気持ちで。それくらいの覚悟で行きたいと思います」

 この言葉、単に「強気」とか「内角で起こして外角勝負」というだけではない。「困ったときの外角低め」が浸透している日本と違い、腕が長いうえにパワーがある打者に外角球はむしろ危ない。インサイドを突き、窮屈な打撃をさせるという考えからだった。

 今大会〝本気〟で臨んだ米国代表はイエリチ(マーリンズ)、アレナド(ロッキーズ)、ゴールドシュミット(カージナルス)といったバリバリの主力が名を連ねる、いわば〝ドリームチーム〟。そんな強力打線に菅野は一歩も引かない堂々たる投球を披露した。

 6回、81球を投げ1失点。特に制球の利いた直球で空振り三振に打ち取るさまは勇ましく、これがメジャースカウト陣に「日本に『SUGANO』あり」を植え付けた。結果は1―1で迎えた8回に勝ち越され、1―2で惜敗。2大会ぶりの決勝進出は果たせなかった。試合後、菅野は「自分の野球に関するすべての中で、すごい最高の経験になった」と振り返った。

 結局、この大会で優勝したのは、決勝でプエルトリコ代表を8―0と圧倒した米国代表。その米国に立ち向かった勇者・菅野は今オフ、ついに海を渡ろうとしている。

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