新人に高額契約金は必要なのか 活躍した選手に適正な対価を

2020年12月07日 16時00分

(左から)巨人ドラフト1位・平内、楽天ドラフト1位・早川

【広瀬真徳 球界こぼれ話】11月末から各球団では新人選手との契約交渉が進んでいる。

 先月23日には巨人から1位指名された平内龍太投手(22=亜大)が契約金1億円プラス出来高、年俸1600万円で仮契約。翌24日にはドラフトで4球団が競合した末に楽天が交渉権を獲得した早川隆久投手(22=早大)も、ほぼ同条件で契約に合意した。

 両投手はいずれも即戦力として期待される逸材。大学での実績や将来性に鑑みれば大型契約は当然なのかもしれない。それでも違和感を覚えてしまうことがある。新人に「高額契約金が必要なのか」という点だ。

 プロ野球界では通常、ドラフトで指名された選手の入団時に来季の年俸提示とともに契約金が支払われる。選手はプロ球界に入った時点で個人事業主。契約を結ぶ球団からいつ戦力外通告を受けるかわからない。不測の事態に備え入団時に球団から一定の契約金や支度金が支払われるのは自然な流れと言える。だが、プロ未経験の新人に高額契約金を支払うのは「賭け」にすぎない。

 かつてプロ野球のドラフトには「逆指名制度」や「希望入団枠制度」が存在した。一部有力選手には所属先を選択できる権利があったため、各球団とも選手獲得には多額の資金を要した。だが2007年に西武の裏金問題が発覚し、同制度は廃止になった。現在は1位指名が重複した場合は抽選。選手側は意中でない球団から指名されれば入団拒否ができる。ただ、現実的に拒否する選手はごくわずか。プロ野球に挑戦したいと願い出る選手の方が圧倒的に多い。こうした環境下にもかかわらず、いまだ各球団が横並びのようにドラフト上位選手に多額の契約金を支払うのは理解に苦しむ。球団経営的にも非効率と言わざるを得ない。

 現在の球界を見渡しても、ドラフト上位でプロ入りした選手が期待通りの活躍を見せる半面、プロ入り後に伸び悩む選手も少なくない。むしろ育成契約から這い上がりチームの主力に躍り出ている選手が目立ち始めている。先日、巨人を圧倒して4年連続日本一に輝いたソフトバンクがその象徴だろう。

 球界のエースに成長した千賀を筆頭に石川、甲斐、周東、牧原。いずれも入団後の努力で育成から支配下を勝ち取り、現在に至った。「ソフトバンクは育成に専念できる施設や三軍を有するから」という声もあるが、それなら他球団も新人への高額契約金を抑制し、その分を育成に注げばいい。その方が費用対効果も見込めるはずだ。

 一般社会において有望新人を受け入れる際、入社時に高年俸の提示はあっても高額契約金を支払う会社はまれである。プロ野球はファンに夢を売る商売とはいえ、コロナ禍で各球団の運営資金は逼迫していると聞く。「活躍した選手に適正な対価を与える」。そんなプロ野球界をつくり上げるのが急務なのではないか。(金額は推定)

 ☆ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。