欲しいのは愛――。中日の契約更改交渉で、選手たちが異例の訴えをしている。

 ここまで3選手が保留し、査定の事前説明に不十分な点やメディアに対して選手が年俸でもめているかの印象を与える発言などをしたとして、日本プロ野球選手会から加藤球団代表に対して抗議文が送りつけられる事態は球界内外をザワつかせた。4日はいずれも前回保留した木下拓が倍増の年俸2400万円、福は2100万円増の年俸4600万円で納得のサイン。どちらも上積みはなかった。

 前回の交渉後に保留の理由を「金額じゃない」としていた木下拓は「金額と査定表のズレがあるんじゃないかという話をしていたので、大きくいえばお金のことなのは間違いない。代表から金額と言ったことで『こういう騒動になって申し訳ない』という話はあったし、僕も先日は申し訳ありませんでした」と席上でお互いに謝罪したことを明かした。福も「疑問は解決されていった」と不満なし。これで一件落着…かと思いきや、この日の交渉では金額より球団の改善点についての要望が集中した。

 球界最年長投手の山井は「もう少しドラゴンズに愛情があるようなチームづくりをしてほしい」と力説し、新人に対する1年目のオフの減給や、限度額を超えるダウン提示が増えている現状に疑問を呈した。根底にあるのは「(アマ選手が)ドラゴンズに行きたくないっていう話も昔はあったけど、またそうなれば寂しい話。そうならないようドラゴンズに行きたい、強いドラゴンズでやりたいっていうふうになってほしい」との思いだ。

 減額制限を超える約65%の減俸となった田島も金額の話はせず「選手みんなと球団側がズレている部分、話し合いがうまくできていなかった部分に関して、今後こうした方がいいのではという話をずっとしていた」と打ち明けた。

 選手側も意図して球団を悪者にしようとしているわけではない。チームが強くなるために何が必要か、さらに「ドラゴンズは暗いというような印象を与え続けてしまっている。そこは変えていきたい」といった前向きな理由から本音をぶつけた結果でもある。

 加藤代表も「球団に意見してくれることは大切だし、それが契約更改の機会でもある。直さなければいけないところは直していきます」と理解を示している。これを機に愛のあふれる明るいチームへと生まれ変われるのか注目だ。(金額は推定)