なるべくしてなった宣言か。ロッテの澤村拓一投手(32)が30日に米大リーグを目指して海外FA権を行使することを表明した。宣言残留もあるというが、メジャー挑戦は確実。実働わずか2か月で新天地を去ってゆく〝幕張の剛腕〟には一部で非難の声が上がっているが、当のロッテや古巣の巨人は意外な反応を見せている。

 澤村は権利行使に関し「日米42球団(日本12球団+米30球団)全てが考えられる。自分のことを一番必要としてくれる球団で腕を振っていきたい」とロッテ残留や国内移籍にも含みを残したが、かねてメジャーに憧れを抱いていたのは誰もが知るところ。米側もその点を把握した上で複数球団が獲得に興味を示しているだけに、よほどのことがない限り米移籍は確実だろう。

 この状況に一部SNSでは「9月に巨人から移籍してわずか2か月でメジャー移籍。これでは復活の場をくれたロッテに不義理ではないか」といった声が上がっている。確かに、短期間のロッテ所属後にいきなりメジャー挑戦では一部ファンが複雑な心境を抱くのも無理はない。だが、古巣巨人やロッテを含めた現場関係者の間では、澤村のFA表明を好意的に捉えている。というのも今回の移籍は「誰一人、損をしない珍しいケース」だからだ。

 まず巨人。今季途中に三軍落ちさせたように、チーム内に澤村の居場所はなかった。仮にチームに放置し続けていたら海外FA権獲得どころか、戦力外の可能性すらあったと言われる。そんな状況だっただけに、新天地で復活を遂げた澤村の動きに口を挟むつもりはない。むしろロッテに送り出した原監督や阿部二軍監督らは本人のメジャーでの躍進を願っていることだろう。

 ロッテも同様だ。今季途中加入なが22試合に登板し、防御率1・71をマーク。13ホールド1セーブでチームのCS進出に大きく貢献した。剛腕の移籍は戦力ダウンに直結するかもしれないが、残留となれば澤村の今季推定年俸1億5400万円に近い金銭負担を強いられるばかりか、巨人時代から投球にムラがある右腕のこと。今季のような好成績を来季残す保証はない。

 球団OBもこう話す。「澤村の今季の活躍はパの打者が彼独特の高速スプリットに慣れていなかったから、という声が多い。おそらくロッテ残留なら来季は研究され、今季のような活躍は見込めない。ならば気持ちよくメジャーに送り出す方がロッテにとって得策かもしれないですからね」

 当事者同士の思惑はほぼ一致している。どんな結果になろうと遺恨、残痕の心配はなさそうだ。