中日・大野雄〝いいことずくめ〟の沢村賞 「テング化」兆候なしに球団関係者ホッ

2020年11月24日 06時15分

受賞記念の色紙を披露する中日・大野雄

 史上最も謙虚な沢村賞投手の誕生だ。中日・大野雄大投手(32)が沢村賞を初めて受賞した。23日に東京都内で行われた選考委員会では巨人・菅野と事実上の一騎打ちとなったが、防御率や完投数、完封数などがリーグトップだった点を評価された。今季中に取得した国内FA権を行使せず、3年総額9億円以上の好条件で残留するなど〝いいことずくめ〟ながら、同賞の受賞は心配される慢心へのブレーキにもなりそうだ。


 今季の大野雄はすさまじい活躍ぶりだった。45イニング連続無失点の球団新記録を樹立し、防御率1・82で148奪三振の成績を残して2年連続となる最優秀防御率と初の最多奪三振を獲得。沢村賞の選考委員の中にはプロ野球記録となる開幕投手からの13連勝を含む14勝2敗、防御率1・97の巨人・菅野を推す声もあったが、11勝6敗ながら6完封を含む10完投の大野雄が選出された。中日では2004年の川上憲伸以来、16年ぶり9人目の受賞だ。

 今季中に国内FA権を取得した大野雄には阪神などの複数球団が熱視線を送っていた。しかし、FA権を行使することなく、出来高払いも含めて3年総額9億円を上回る好条件で残留を決めた。何もかもがうまくいった最高の1年。それでも沢村賞左腕は浮かれることなく「自分の中でもこういう賞をいただいて身が引き締まるというか、普段の行動からしっかりしていかなあかんなと思うし、(周囲から)見られているということをすごく感じながら生きていきたい」と〝大人のコメント〟を発した。

 これには球団関係者も感心しきりで「移籍にしろ残留にしろ、FA絡みで複数年の大型契約を結ぶと活躍できないケースがほとんど。今年の大野は単年契約で勝負をかけて自己最高の成績を残せて大型契約を勝ち取ったから、ひょっとして気の緩みとか出ないか心配な面もあった。でも発言を聞いている限り、来季以降もやってくれそうな期待感でいっぱい。このタイミングで沢村賞を受賞できたのは本当に良かった」と喜んだ。

 大野雄の謙虚さの裏には、こんな考えがある。「プロ野球の世界って本当に怖い。世の中も、社会も。いい時は長く続かない。そういう時に偉くなっちゃって…みたいになる。自分だけの力で抑えたんじゃなく、みんなが守ってくれて、打ってくれての成績だと思う。そういうのは忘れてはいけないとずっと心の中で思っている。これからもそれは持ち続けていくと思う。謙虚にやっていきたい。母親がそういう感じで育ててくれた」

 来季は個人的なタイトルや名誉だけでなく、狙わなければならないものがある。「いろんな賞をいただいて、監督もエース、エースといろんな場面で言ってくださっている。それに恥じないというか、そう言っていただいているのに、自分がそういう意識にならないと申し訳ない。無責任な行動もできないし、普段の練習の姿もいろんな人が見ている。自分がチームの代表と思っていくことが、これからの成長につながる。チームの優勝を第一に置いて腕を振りまくりたいと思うし、ケガはいけないが、多少のリスクは背負いながら1年間しっかりと投げたい」

 10年ぶりのリーグVは大野雄にかかっているといっても過言ではない。