プロ野球のシーズンで最も活躍した先発完投型の投手を表彰する「沢村賞」の選考委員会が23日、東京都内で行われ、中日・大野雄大投手(32)が初受賞した。

 セ・リーグタイ記録の開幕13連勝を含む14勝2敗、防御率1・97をマークした巨人・菅野智之投手(31)との一騎打ちとなったが、防御率1・82、148奪三振の成績を残して2年連続で最優秀防御率と初の最多奪三振のタイトルを獲得した上、11勝6敗ながら6完封を含む10完投を挙げて完投数、完封数などでリーグトップだった大野雄が選出された。

 オンラインで記者会見した堀内恒夫選考委員長は「菅野も数字は拮抗していて素晴らしいが、今年のベストワンは大野という意見が大半を占めた」と説明し、平松政次委員は「沢村賞本来の先発完投の姿を見せてくれた」と目を細めた。

 ナゴヤ球場で会見した大野雄は「お電話をいただいたときは、すごくうれしかったです。自分自身が候補に挙がっているのは知っていたし、もし取れるなら取れたらうれしいなと、少しソワソワしていた。僕を含めて先発投手は、沢村賞はどこか頭の中にあるが、遠いものすぎて実際にシーズン前に目指すような賞にならないぐらい届かないもの。意識しても取れるような賞じゃないので、まさかという感覚ですね」と初受賞に驚きを隠せない。

 中日勢では過去8人(10度)が受賞しており、2004年の川上憲伸(17勝7敗、防御率3・32)以来、16年ぶりとなったが「川上憲伸さんもそうなんですけど、受賞した方々は素晴らしい投手ばかり。自分もそこに名前が加わると思うと不思議な感覚です」とあまり実感がわかない様子で話す。

 ライバル右腕に対しても大野雄は称賛を惜しまなかった。ダブル受賞の可能性ゼロではなかったが「僕が一人で獲れるというのは想像できない部分もあった。もし菅野投手でも全然おかしくなかった。僕が言うのは変ですが、納得できていた。その中でも一人に絞っていただいたのは、素晴らしいことだと自分でも思うので、選んでいただいた選考委員の方々に『ありがとうございます』と伝えたいです」と謙虚に話した。

 沢村賞は正式には「沢村栄治賞」。史上初の無安打無得点試合を達成した不世出の大投手といわれる故沢村栄治(巨人)の功績をたたえ、1947年(昭和22年)に制定された。


 選考の基準は下記の通り

(1)15勝以上の勝利数 (2)150以上の奪三振数 (3)10以上の完投試合数 (4)2・50以下の防御率 (5)200イニング以上の投球回数 (6)25以上の登板数 (7)6割以上の勝率