【日本S・第1戦】序盤はG打線に苦戦した鷹・千賀 7回零封の〝頭脳投球〟を前田幸長氏が解析

2020年11月22日 03時00分

3回に投ゴロを華麗にさばいたソフトバンク・千賀(左)

 ソフトバンクが巨人との日本シリーズ第1戦(京セラドーム)に5―1で先勝した。先発・千賀滉大投手(27)がG打線を7回無失点に抑える力投を見せたが、本紙評論家・前田幸長氏はエースの調子が良かったわけではないとみている。それでも右腕がチームに白星をもたらせた理由とは――。


【前田幸長・直球勝負】ある意味で、シーズン終盤に見せていた〝千賀らしい投球〟だった。立ち上がりから制球が定まらず、3回までに53球を要した。巨人打線にフォークを見極められ、うまく対応されていたことも大きな要因だ。バッテリーを組む甲斐とともに苦しい配球を強いられたことだろう。それでも7回を3安打無失点にまとめることができた裏には、鷹のエースの引き出しの多さがある。

 3回先頭のウィーラーに初安打を許し、続く大城には追い込んでから6球続けてファウルで粘られて嫌な流れになりかけた。しかし、最後は12球目に外角低めのスライダーでお手本のようなコースを突き、引っ掛けさせて一ゴロ。後続も抑えて得点を許さなかった。

 4回もそう。先頭の坂本と岡本に連続四球を与えて無死一、二塁のピンチを作りながら、ここでギアを入れ直した。次の丸に対してのウイニングショットは外角低め、154キロの真っすぐで遊ゴロ併殺打に仕留めた。

 たとえ状態が良くなくてもオンとオフを切り替え、きっちりと要所を締める。ペース配分も見事で巨人打線に連打を許さず、本塁も踏ませなかった。

 今年は新型コロナ禍の影響から難しい調整を強いられたが、シーズンの最後を4連勝で締めて最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手3冠に輝いたのは頭脳的な投球術があってこそ。大舞台でも慌てることなく冷静な組み立てができるのは、「さすが」の一言に尽きる。

 エースの力投を勢いづけた打のヒーロー・栗原も見事だった。2回には菅野の生命線でもあるスライダーが甘くほぼ真ん中へ入ったところをとらえ、先制2ランを右翼へ叩き込んだ。巨人側の視点で言えば、リードした大城は、この場面で初回二死から柳田を空振り三振に仕留めた内角低めへの縦スラを要求したのだろう。だが、結果として失投となり、ロッテとのCSで5打数無安打と精彩を欠き、2戦目には途中交代した栗原を蘇生させる形になった。

 ホークスとしては勝負強い栗原が大事なシリーズ初戦で目覚めて万々歳だろう。対する巨人は要警戒レベルの選手を1人増やす格好となった。(本紙評論家)