【藤井康雄連載コラム】西武・中村剛に感じる「打たれそうだな」という雰囲気

2020年11月20日 11時00分

常に平常心でスイングする西武・中村剛也

【藤井康雄「勇者の魂」(23)】僕の満塁本塁打は歴代3位の14本、代打満塁本塁打になると歴代1位の4本。特に2001年には1シーズンで3本の代打満塁本塁打を打つことができた。

 どの打席も狙って打ったものはなくて、いいタイミングで自分のスイングをするためにはどうするか。打球方向のイメージも持たず、ストライクゾーンのボールをいい形で振れるよう、それだけを心掛けていました。変な邪念を持たない。相手投手は打たれまいとして遠くに、低く投げてくる。でも逆に言うと四球を投げられないからどこかでストライクを投げてくるんです。カウントを取りに来る球があるぞ、ストライクが次に来るぞ、というところの読みですよね。

 満塁本塁打の記録1位は西武の中村剛也(20本)で、2位が王貞治さん(15本)、3位が僕と近鉄などに在籍した中村紀洋(14本)です。王さんに関しては868本打っているわけですから、そりゃあ満塁弾もそれくらいはあるだろうと思いますよ。西武の中村については相手ベンチから見ていても満塁で彼に回ると「打たれそうだな」という雰囲気になる。満塁に強いムードを持っていますね。自分も現役時代はあんな感じがあったのかな、と思ったり…。相手投手からしたら投げる前からやられそうな雰囲気になるんですよ。

 僕と似ているところといえば、彼も常に同じスイングを心掛けていますね。空振りもホームランも同じスイングだから当たらないと三振するし、当たればホームランもあるぞっていうね。リラックスして、しっかり自分の形のスイングができる。同じ表情、ルーティンをやって満塁だろうが、走者がいまいが、同じなんですよ。それができるのは彼の経験だし、打たなくても「まあいいや。次打てばいいや」くらいの余裕がある。若い選手なら「打たなきゃやばい」って思っちゃいますけどね。動じない。

 僕は1998年に36歳で30本塁打できたし、練習での飛距離は落ちていませんでした。体力的な衰えというのは引退する40歳まで感じたことはなかったですね。ただ、出番が減っていく悔しさはあったし、まだまだできるのにって…。01年くらいからチーム事情もあって代打が多くなり、ずっと出続けるのが難しい状況になって…。代打という自分の持ち場を確立させようという意識はありましたよ。

 最後の年になった02年は目の衰えがあったかもしれない。一塁を守っていて投手のけん制球がすごく速く感じるようになった。それまではどんな速い球が来ても普通に捕ってタッチできていたのに、ついていくのが怖くなったりとか…。どこかちょっとずれているというか、打撃でも打ち損じが増えて打率も上がらない。何とか新監督の石毛宏典さんの期待に応えたかったけれど…。

 ☆ふじい・やすお 1962年7月7日、広島県福山市出身。泉州高(現近大泉州)から社会人・プリンスホテルを経て、86年のドラフト4位で阪急に入団。長距離砲としてブルーサンダー打線の一角を担った。オリックスでも95、96年の連覇に貢献。勝負強い打撃が持ち味で、通算満塁本塁打(14本)は歴代3位。代打満塁本塁打(4本)は日本記録。2002年に引退後はオリックス二軍打撃コーチ、11年からソフトバンクで一軍打撃コーチを務め、18年にオリックスに一軍打撃コーチとして復帰。今年から総合建設業「共栄組」に籍を置き、JSPORTSの解説、神戸中央リトルシニア、関西創価で指導している。
    

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