「朗希育成法」を井口監督は貫くべし プロ1年目は次戦登板させず

2020年11月16日 16時00分

佐々木朗の一軍デビューはいつか

【広瀬真徳 球界こぼれ話】プロ1年目の実戦登板がかなわなかったからこそ、来季に期待が持てるのではないか。ロッテ・佐々木朗希投手(19)の昨今の動向を見ているとそう感じさせられる。

「令和の怪物」は6月の開幕直後から一軍に帯同。吉井投手コーチらの下で体力強化に励み、今季中の一軍登板に向けて調整を進めてきた。そのかいもあり、10月上旬には井口監督が「ブルペン(投球)でもかなり力強い球を投げている。何とかいいところで放れれば」とシーズン中の登板を明言。このひと言でメディアや多くのファンが「いよいよか」と怪物デビューに期待を寄せた。

 ところが、実際は二転三転の末に「(本人の)状態が上がってこない」(井口監督)と一軍戦はおろか、二軍戦登板も幻に。一度は派遣予定だった若手主体の「みやざきフェニックス・リーグ」(11月8日~)への参加も現時点で見送られている。この不可解な動きにネットやSNSでは批判的な意見が急増。「ロッテは過保護なんじゃないか」「プロで通用する体づくりを一軍帯同でできたのか」と球団の育成方針を否定するようなコメントも散見されている。

 確かにプロ1年目の高卒新人投手が試合に開幕から一軍で調整するのは異例のこと。ファンが苦言を呈したくなる気持ちも推察できる。それでも野球の本場・大リーグに目を向けるとプロ1年目からメジャーでプレーする選手はごくわずか。高卒選手に至ってはドラフト翌年は最低でも1年間、下部組織のマイナーで経験を積ませることが常識である。

 これは新人選手の故障を防ぐ意味合いが大きいためで、故障癖や体力不足の投手などには1年間実戦登板させないことも珍しくない。その視点から見れば今季の佐々木朗の育成方針は何ら不思議ではない。シーズン中の一軍帯同も本人の体を知り尽くすスタッフが常時異変に気づけるよう配慮したもの。「過保護」ではなく佐々木朗の潜在能力を高く買う球団側の期待の表れだ。

 井口監督が佐々木朗の一軍登板をほのめかしたころ、本人は試合前練習のキャッチボールで130~140キロ程度の直球や変化球を投じていた。「大して力を入れずに」である。そんな投球を目の当たりにすれば首脳陣がそばに置きたくなるのも無理はない。むしろ「即戦力と判断すれば1年目から一軍で使う」というこれまでの日本球界における高卒新人の扱いや概念こそが時代遅れになりつつあるのではないか。

 高校球児の丸坊主問題や「気合でプレーしろ」などという精神論を含め、日本球界にはいまだに世間の常識から逸脱したあしき慣例が残る。これを改善しなければ未来はない。

 球界の新人育成法に一石を投じる意味でも、佐々木朗とロッテは今後も堂々と自己流を貫けばいい。来季以降の活躍で雑音を封じればいいのだから。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。