〝原GM〟のクビ切りに忖度なし――。リーグ連覇を果たした原辰徳監督(62)率いる巨人では戦力外通告などで、すでに10選手が来季の支配下から外れることが決まった。戦力整備は今後も続く見込みだが、中でも球団内外をザワつかせたのが、ナティーノ・ディプラン投手(26)への戦力外。球団や発掘人のメンツにとらわれない新基軸が表面化している。
 
 チームは12日にジャイアンツ球場で全体練習を行い、原監督も報道陣に応対しつつ、ネット裏からグラウンドに鋭い視線を送った。8年ぶりの日本一へ調整を続ける一方で、首筋が冷える季節にも突入している。岩隈が今季限りで引退し、宮国ら6選手に戦力外が通告され、ドラ1ルーキー堀田、鍬原と高木の3選手は育成から再出発する方針となった。

 新陳代謝を図ることは毎年のことだが、新人右腕に下された審判が〝新生・原巨人〟の変化を物語るともっぱらとなっている。それは11日に戦力外が言い渡されたドミニカ共和国出身のディプランだ。

 ディプランは今季から育成選手として入団し、3月31日に支配下に昇格。26歳以上の外国人選手の支配下登録期限は同日までと定められ、まさに滑り込みでジャパニーズドリームをつかみ取った。ただ一軍で思うような活躍はできず、2試合で防御率19・29。成績と年齢だけを照らし合わせれば違和感はないが、ディプランは支配下昇格1年目での戦力外だ。

 球団関係者によれば「支配下にした年に切るということは、球団が見込み違いだったことを認めたも同然。つまりは編成の失敗を意味する」というが、今回はバッサリと切った。さらに、ディプランが入団した経緯が従来と異なるのも大きな着目点となった。

 ディプランを発掘したのは、他ならぬ阿部慎之助二軍監督(41)だったからだ。昨年11月上旬にドミニカで行われたトライアウトを視察した際に目に留まり、巨人入りの道が開かれた。過去には「誰が獲ってきたかや、その選手のバックボーンなどが関係して切りづらくなったケースは少なくない」(同)そうだが、〝阿部ルート〟を否定する格好となっても整理対象から外すことはなかった。

 伸びしろや能力などを総合的に判断し、切るべき人を切る。一見すると当たり前なのだが、巨大組織の巨人ではすべてが当たり前にできたわけではない。ましてや、今年は8月にコーチやスカウト経験が豊富な井上真二氏をファームディレクターに配置転換するなど、クビ切りの〝目利き〟にも力を入れている。こうした球団のメンツや入団経緯に忖度しない方針転換を象徴するのがディプランというわけだ。

 もちろん、最終決定権は編成トップも兼ねる原監督にある。球団が「発掘と育成の元年」を掲げる今季。原巨人の切り方もひと味違う。