大野雄のために借金!「3年9億円超で中日残留」の裏に球団の〝男気〟

2020年11月12日 05時15分

ファンの声援に応える大野雄

 今季7月に国内フリーエージェント(FA)権を取得した中日の鉄腕エース・大野雄大投手(32)が11日、広島との今季最終戦が行われたマツダスタジアムで取材に応じ、FA権を行使せずに残留することを表明。決断の裏には球団の誠意と〝男気〟があったという。 

 大野雄は「ドラゴンズで優勝したいということですね。ずっとこのチームで優勝したいと思ってましたし、今年はそれでAクラスという形になって来年に間違いなく、つながる。そこをはっきり目指せるなという手応えが今年はできた」と力説した。

 巨人、阪神など複数の球団が水面下で調査に乗り出していたが、球団とは約1か月前から下交渉を開始。3年契約、総額9億円プラス出来高払いの条件で合意したもようだ。「自分が思っていたよりもいい提示をしていただいたので。決めるのは早すぎと思われるかもしれないけど、そうすれば球団も助かるし、次の(チーム編成の)動きもしやすいと思った」とドラゴンズ愛を強調した。

 FA宣言すれば、大争奪戦は必至で、さらなる高額年俸も見込めたはずの左腕。しかし、「去年の今ごろ、単年契約を選んだときは、ウチの球団だけじゃなくて、他の球団さんも知りたかった。大事な権利ですし、自分の評価というものは選手はすごく気になるもの。ただ、聞くだけ聞いてというのはしたくなかったので。しっかりと悩もうと思っていたんですけど、1試合1試合、投げるたびに、やっぱりドラゴンズでやりたい、投げたいという感情が生まれていった。その気持ちが試合ごとに増していったので、他のところの評価を聞きたいというのはだんだん薄れていって最後にはなくなっていた」と打ち明ける。

 そんな中、球団は借金をしてまで大野雄を引き留めるための覚悟を持って交渉に臨み、その最大限の誠意を見せたことが成功につながったらしいという話がチーム内でもっぱらとなっている。

 チーム事情に詳しい関係者は「少し前まで巨人や阪神とのマネーゲームになったらウチは太刀打ちできず、正直、大野のFA流出は避けられないという不安の声でいっぱいだった。だけど、何とか大野に残ってもらえるように球団は借金をしてまでお金を用意して、大野に好条件を伝えたことで、その熱意が伝わって早々と残留を決めてくれたようだ」という。

 今年はコロナ禍でどの球団も興行的には非常に苦しい年となってしまったが、そんな中での球団の〝男気〟を見た大野雄も納得の早期決着となり、このところの左腕の言動はファンの間からも話題になっていた。

 6日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)に登板し、今季限りで引退した吉見一起投手(36)へ向けた惜別コメントでは「これからもチームを勝利に導くことが恩返しになると思いますので吉見さんの魂を引き継いでいきたいと思います」。その試合後の表彰式では「まずはシーズンをしっかり戦い終えてから、みなさんにいい報告ができればと思います」とチームやファンへ向けて残留をほのめかすメッセージを送っていた。

 最近の思わせぶりな言動について「隠し切れなかった。別に隠す必要もなかったですしね、本心ですし、そんな変な駆け引きをする必要はなかった。思ったことを言っちゃってました」と舌をペロリと出す。

 昨季まで2桁勝利から4年連続で遠ざかっていたが、ここまで今季はチーム最多の11勝(6敗)をマークし、エースとして完全復活。9月から10月には45イニング連続無失点の球団記録を樹立して防御率1・82と148奪三振はいずれもリーグトップを誇る。6完封を含む10完投を記録しており、沢村賞獲得の可能性も十分だ。

 もちろん、条件面だけが理由ではない。ここまで育ててもらった恩義を一番に感じており「まだ恩返しを全然し切れていない。ケガをしているときに最後のリーグ戦で1試合も1球も投げられないまま迎えたドラフトで1位指名していただいて、その恩というのはまだ返せていない。それはチームを勝利に導くこと、すなわち優勝です。優勝に導くことが本当の恩返しやと思うので、そこを目指していきたい」と言い切った。

 憧れのあるメジャー挑戦に関しては「そんな簡単に行けるもんじゃない。なんとも言えない」と言葉を選んだが、ない袖を振ってくれた球団への感謝と恩義を胸に秘めて来季以降も頼れる竜のエースとして君臨する。