ついに〝免許皆伝〟か。巨人・吉川尚輝内野手(25)がプロ4年目にして故障離脱することなく初の規定打席に到達し、シーズン完走も目前だ。タフさも身につけてきた若武者に対する原辰徳監督(62)の起用法の変化を指摘する声も上がっている。打順降格やライバル投入によって危機感をあおる「原流追い込み術」で、これこそ一人前と認めた証しだという。

 8年ぶりの日本一奪回へ、原巨人の試行錯誤が続いている。中軸の坂本、岡本、丸以外の打線をどう組むのか。14日のDeNA戦(横浜)1試合を残す原監督は11日も「ベストがどこなのか?」と考えを巡らせていた。

 そんな中で今季、大きな戦力となった一人が吉川尚だろう。昨季までは腰痛や骨折でシーズンを棒に振り、指揮官も「無事これ名馬というのも実力のうちである」と故障がちな点を課題としてきた。しかし、今季は一度も離脱することなく自己最多の111試合に出場し、打率2割7分4厘、8本塁打、32打点をマークしている。

 大きなケガなく機能したことで、吉川尚への信頼とともに起用法には厳しさも加わったとの見方もある。首脳陣が理想とする吉川尚の打順は1番。10月30日にリーグ連覇を決めた翌31日は「尚輝のらしさが出ないといけませんね」とあっさりと2打席で交代させ、さらに翌日の今月1日は打順も8番まで一気に下げた。

 もちろん、打線全体のバランスを試す狙いもあるが、オーダーそのもので選手に〝メッセージ〟を送るのは原監督の常とう手段でもある。

 さらに「いよいよ原監督が吉川尚を〝大人扱い〟してきた」(球団関係者)とみたのは、打順降格と同時に同じ二遊間を守れる3年目の湯浅を一軍に昇格させた点という。

「湯浅は走力が通用するかを見極めるためではあるけど、実績もキャリアも下でも同じようなポジションの選手が一軍に上がってくればおのずと尻に火がつく。吉川尚をある程度認めたからこそのやり方だと思う」(同)

 例えば、2次政権時は極度の不振に陥った村田(現二軍野手総合コーチ)に、2013年の交流戦で屈辱的な9番でスタメン出場。16年には不動の三塁に当時2年目の岡本や中井(DeNA)を〝刺客〟として送り込んだこともあった。選手に安心感を抱かせず、常に危機感をあおるのは変わらぬ手法の一つでもある。

 裏を返せば、原監督から〝一人前〟と認められたからこそ。指揮官の思惑が奏功したのか、吉川尚は下位で結果を残して7日からは1番に復帰した。進化した背番号29が日本シリーズの大舞台でも躍動できるのか、見ものだ。