念には念を入れて…ということか。リーグ連覇を成し遂げた原辰徳監督(62)率いる巨人が8年ぶりの日本一奪回へ、着々と新たな一手を打っている。日本シリーズに向けた戦力の見極めを行うだけでなく、V2達成直後から三塁コーチャーも変更。サイン伝達はもちろん得点にも直結する司令塔の交代劇は、昨季の〝悪夢〟も踏まえた首脳陣離脱への「危機管理」との見方も浮上している。


 今後の糧にするしかない。3日の広島戦(マツダ)に先発した戸郷は、2―0の9回二死一塁から菊池涼に痛恨の同点2ランを被弾。あとアウト1つでプロ初完投と初完封を逃し、146球の熱投も実らず、チームは2―2で引き分けた。広島・森下と争った新人王のタイトル奪取も絶望的となり「(森下を)倒すためには僕も身を削って投げないと。詰めの甘さが今の結果になっている。悔しさが一番ですね」と唇をかんだ。

 とはいえ、時は待ってくれない。チームはリーグ連覇を決めた翌10月31日のヤクルト戦(東京ドーム)から、三塁コーチャーを後藤孝志野手総合コーチ(51)から石井琢朗同コーチ(50)に変更した。原監督は「後藤はずっと緊張感の中でやっていたので、少し外からチームを見てもらおうと。タク(石井コーチ)もできる人だから。同じような役割を持っている人なので、ちょっと風景をお互いに変えさせてどう見えるか」と説明していた。

 ただ、理由はそれだけではないようだ。「コーチの離脱は今年もあったし、昨年の日本シリーズ前にもあったからね…。いざ本番となった時に不測の事態が起きてバタつきたくないというのもあるのでは?」(球団関係者)。開幕前に坂本と大城に新型コロナの陽性反応こそ出たが、それ以降は徹底した対策も奏功してユニホーム組の感染者はゼロ。しかし、どれだけ注意しても侵入してくるのがウイルスの恐ろしさだ。コロナに限らず、今季は元木ヘッドが虫垂炎のため約2週間、戦列を離れ、不在の間を阿部二軍監督が代行を務めた経緯もある。

 昨季は日本シリーズ直前でチームの指揮系統がドタバタに見舞われた。一塁コーチャーだった鈴木尚広外野守備走塁コーチが「一身上の都合」を理由に電撃退団。原監督のサインをベンチから三塁コーチャーに伝達していた後藤コーチが急きょ一塁コーチャーとなり、新たな伝達役に村田修一ファーム打撃兼内野守備コーチが一軍打撃コーチとして緊急招集された。

 結果的に0勝4敗でソフトバンクに圧倒され、サイン伝達の機会はほぼなかった。だが、あらゆる最悪の状況を想定し、不測の事態にも先回りして対処していくのが原監督のスタイルだ。三塁コーチャーには本塁突入の可否を瞬時に判断し、走者に伝える重要任務もある。あらゆる手を打ち、8年ぶりの頂点へ突き進む。