弱肉強食化が進む育成ドラフトの賛否

2020年11月02日 16時00分

甲斐拓也と周東佑京(左)も育成出身だ

【広瀬真徳 球界こぼれ話】先週行われたプロ野球のドラフト会議。今年は新型コロナウイルス感染防止の観点からオンラインによる指名、抽選や無観客による開催など異例ずくめだった。もっとも、興味深かったのはシステムや会場の様相だけではない。育成選手の指名が激増したことにも驚かされた。

 巨人の12人、ソフトバンクの8人を中心に全12球団合計で計49人もの選手が育成枠で指名された。この数字は2005年の制度開始以来過去最多。今年のドラフト指名全体(計123人)のおよそ40%を占めるまでに至っている。

 育成選手は低年俸に加え3桁の背番号等、支配下登録選手と比べ様々な制約がある。とはいえ、プロ野球選手であることには違いない。実際に育成から支配下登録され一軍で活躍する選手も増え始めている。今や球界屈指の投手に成長したソフトバンクの千賀滉大や甲斐拓也捕手、今季パ・リーグ盗塁王が確実視される周東佑京内野手らも元は育成選手だった。こうした現状を鑑みるとアマチュア選手が育成選手としてプロ入りすることは決して悪い話ではないだろう。

 それでも、ドラフトでの育成指名が増え続ける現在の流れを懸念する声もある。

 スカウトに携わるパ・リーグのある球団職員は球団側の裏事情を踏まえこんな話をしてくれた。

「プロへの門戸が広がるという意味では育成ドラフトはアマチュア選手にとって素晴らしい制度です。でも、一部の球団ではそう考えていない。育成契約で選手を獲得できれば入団時に高額な契約金、年俸を支払う必要がないだけでなく、プロ入り後に『使えない』と判断すればクビを切りやすいというメリットもある。つまり、球団の中には経費抑制の一環として育成制度を活用しているフシもあるわけです。これがプロを目指す選手にとってプラスなのか。微妙なところですよね」

 ここ数年はドラフトでの育成指名の増加に合わせ、プロ入り後に育成から支配下登録される選手も急増している。今シーズンだけを見てもその数は25人に上る。

 育成指名が浸透しプロへのハードルが低くなった半面、選手側はプロ入り後に低年俸で厳しい競争を強いられる。これは少しでも初期費用を抑えて新人選手を獲りたい球団側の思惑とも一致するだけに…。今年のドラフト傾向を見る限りプロ野球界は今後一層、選手間格差や弱肉強食化が進む可能性が高い。

 ☆ひろせ・まさのり=1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。