【独占手記】ソフトバンク・千賀 〝エース〟の重みで不眠の日々「僕の尻拭いをしてくれた柳田さんにも…」

2020年10月28日 05時15分

苦しんだシーズンを振り返ったソフトバンク・千賀

 ソフトバンクが27日のロッテ戦(ペイペイ)に勝利して3年ぶりのリーグV奪回を果たした。コロナ禍の厳しいペナントレースを制した鷹ナイン。中でも苦労の一年間を過ごしたのがエース・千賀滉大投手(27)だった。新フォームへの移行が思うように進まず、チームに貢献できない苦しみ。唯一無二の盟友・柳田悠岐外野手(32)からの叱咤激励に応えられないふがいなさ、悔しさ。それでもチームのために腕を振り続けた右腕。熱い思いを本紙に独占手記でつづった。


「エース千賀」。正直、このフレーズを見たり聞いたりするのがつらいシーズンでした。「エースなわけないじゃん」って。ずっと光が見えず、しんどい毎日でした。今まで気にもしなかった周囲の反応が気になったり、いつでもどこでも眠れる人間だったのに、眠れない日が続いたのは人生で初めてでした。

 今年はフォームを変更して臨んだシーズンでした。結論から言うと、うまくいかなかった。悔しさとふがいなさ、チームに貢献できない申し訳なさから「俺は何をやっているんだろう…」と、自責の念に駆られました。

 プロ野球選手は何かしら肉体的な不安や問題を抱えながら戦っていることが多いと思います。僕にも少なからずある。昨年までのフォームで投げ続ければ、故障離脱や手術につながる可能性も出てくると感じていました。途中で離脱するような投手にはなりたくないと思っての挑戦でした。

 感覚的な部分も多いので説明するのが難しいですが、なぜフォークが落ちないのか。真っすぐも他の変化球も満足のいくボールを投げられないのか。理由は分かっているけどアジャストできないという現実がありました。

 このままではチームに迷惑がかかるという思いもあり、元のフォームに近い投げ方にすることを決めたのが8月でした。ただ「原点」に戻るにも時間がかかり、自分でもどうしたらいいか分からなくなりました。

 チームや仲間が苦しい時にギアを上げて抑える――。常にマウンドで持ち続けている気概ですが、気持ちにパフォーマンスが追いつかなかったのも、この時期でした。

 8月11日、本拠地でのオリックス戦。後ろで懸命に守ってくれていた川瀬のミスをカバーしてやることができなかった(※注)。試合後のロッカー、柳田さんがやってきて「ヒカル(川瀬)は何も悪くない。お前や!」って言われました。僕が言うのもなんですが、柳田さんと僕との関係だから成り立つものがある。言われた時は、もちろん悔しい。「分かってますわい!」と。でも、すぐに「打ってくれて、ありがとうございました」って言いました。2本のホームランで、後輩を救えなかった僕の尻拭いをしてくれた。

 いつもセンターから〝しっかりせぇよ〟という視線は感じています。〝お前はこんなもんじゃないだろ〟って思ってくれているから、ずっと言い続けてくれる。いつだってストレートに言葉をくれる。嫌みや陰口を言わない人。必ず面と向かって言われます。僕にとって本当に特別な存在。早く応えられる選手になりたいと思っています。

 9月半ばくらいからは、少しは様になるような結果が出ているのかもしれません。こういう状態なので今は「最悪のケース」を常に想定して、これまでよりも慎重に投げていると思います。そういう意識がいい結果につながっているのかもしれません。そこは収穫で今後に生かしていきたいです。

 今年はこういう状態にもかかわらず、監督に使ってもらい感謝しています。とにかく日本一になるまでチームのために腕を振りたい。やっぱり、チームが勝てば救われる。シーズンが終われば、新しいフォームの習得に再挑戦したいと考えています。そこは逃げたくない。自分が強くなることで、それがホークスの力になればいいなと思います。悔しい思いをした今年を無駄にはしない。未来につなげるために、志を持って戦いたいです。(ソフトバンクホークス投手)


 ※注 8月11日のオリックス戦は5―0で迎えた5回の守りで、高卒5年目の川瀬晃内野手(23)が2失策。千賀がT―岡田に逆転満塁弾を浴びるなど一挙6失点(自責0)で、試合をひっくり返された。だが、6回に打線が川瀬の四球などで好機をつくると、柳田が14号逆転3ラン。2回にも2ランを放っていた主砲は3安打5打点の活躍だった。試合後のお立ち台で、柳田は「ヒカル(川瀬)には『お前は悪くない。千賀が悪い』と言いました」と明かし、ファンの間でも大きな話題となった。

 

【今季の千賀】2月1日の春季キャンプ初日から右ふくらはぎの張りで別メニュー調整。右前腕の違和感で2月27日にリハビリ組へ。コロナ自粛期間中にフォームの本格変更に着手。7月7日の楽天戦で今季一軍初先発。
 
 昇格後はローテを一度も外れず、ここまでチームトップの9勝。直近5戦はすべて1失点以内(直近3戦は自責0)。27日時点の成績は9勝6敗、防御率2・49。105回を投げて128奪三振、奪三振率10・97。16試合中クオリティースタート(先発で6回以上自責3以下)は12試合。