【赤坂英一 赤ペン!!】巨人・原監督の「補強期限撤廃」発言が波紋を広げている。通常は7月末、今季はコロナ特例で9月末だったトレードや外国人の補強期限を取っ払い、「一年中」必要な選手を取れるようにするべきと言いだしたのだ。

 ひと昔前だったら、巨人からこんな“改革発言”が飛び出すと、「身勝手で利己的」とマスコミや他球団のファンに批判された。が、今回原監督が唱えた「補強期限撤廃」論には、他球団からも賛同する声が聞かれる。「コロナ禍が終息しそうにないからです」と、某セ球団関係者が言う。

「今年は観客が激減し、経営が逼迫して選手の解雇や年俸削減を検討している球団が多い。チャンスの少ない一軍半クラスの選手にすれば、そんな資金の乏しい球団でクビにされたらたまりません。一軍で使ってもらえる球団にトレードしてもらったほうがよっぽどマシですからね」

 実際、今年は巨人からロッテにトレードされた澤村が久々に活躍。楽天

から巨人に移籍したウィーラー、高梨らも大いに存在感を発揮している。高梨の交換相手・高田は将来を嘱望されていた若手投手だけに、ファンからは「かわいそう」「もったいない」といった声も聞かれた。が、ある巨人OBはこう言っている。「大竹のFA移籍の人的補償で一岡が巨人から広島に移籍したとき(2013年)はそんなことも言われたけどね。もう、そんな時代じゃないよ。今の巨人じゃ、原監督に興味を持たれなくなったらもうおしまい。巨人の二軍でくすぶっているより、他球団にトレードしてほしいと思っている若手は大勢いるんです」

 だからこそ、原監督も堂々と自説をぶち上げることができたのか。

 そこで思い出されるのが02年オフ、大リーグへ去った松井秀喜の穴埋めとして、ヤクルトのペタジーニを引き抜いたときのこと。「巨人にとってはいいニュースですね」と話した原監督に「若手のチャンスが減るのではないですか?」と私が聞くと、原監督は突然、大声でまくし立てた。

「プロは弱肉強食の世界だ! 力さえあれば誰でもレギュラーを取れるんだから! 最初から諦めてるようでは生き残れない! そんな選手は皆無だ!」

 そして、周りの記者に熱っぽく語りかけた。

「みんな、もっと前向きに考えよう! ポジティブシンキングだ! これはいいニュースなんだ!」

 18年前、44歳の若大将はまだ補強を批判されることにナイーブだった。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。