今の球界の雇用形態は時代錯誤だ! 第2、第3の澤村が生まれる環境づくりを

2020年10月05日 16時00分

ロッテでよみがえった澤村

【広瀬真徳 球界こぼれ話】「環境が変わるだけで人はここまで変わるのか」

 9月にトレードで巨人から加入したロッテ・澤村拓一投手(32)を見ているとそんな思いが募ってくる。

 移籍前の澤村は、表情に覇気がなく野球に対する姿勢もどこか自信なさげだった。だから電撃トレードが決まった際には「本当に活躍できるのだろうか」と半信半疑の思いが抜けきれなかった。

 それがふたを開けてみたら先月8日の日本ハム戦で3者連続三振という華々しい新天地でのデビューを飾ると、その後の躍進は周知の通り。先月末まで8試合連続無失点を記録するなど、今やチームに欠かせないセットアッパーとして救援陣を支えている。

 もっとも球界を見渡せば澤村だけではない。7月中旬に楽天から巨人にトレードで移籍した高梨雄平投手(28)や、9月下旬に広島から楽天に移籍したDJ・ジョンソン投手(31)のケースなども同じ。今季は環境が変わったおかげで再起した選手の躍進ぶりが目立つ。こうした選手を見ると、来季も各球団によるシーズン中の選手交換を積極的に行ってほしい。

 プロ野球選手は現行のルール上、最低でも国内FA権を取得するまでは自分の意思で他球団に移籍できない。一部の実績のある選手は契約交渉の席などでメジャー移籍や他球団へのトレード志願を球団側に願い出ることはあるが、望み通りになる事例はごくわずか。大半は契約の名の下に球団に拘束される傾向にある。この背景には戦力均衡やプロ入り時に支払われる高額な契約金の存在などが挙げられるが、これらは終身雇用が当たり前だった昭和時代のこと。転職や副業が当たり前になった現代社会において今の球界の雇用形態は時代錯誤としか言いようがない。

 一部球団の幹部からは「移籍した選手が新天地で活躍するとフロントの責任が問われる。それなら囲っておいた方がいい」との声も聞く。これも時代遅れと言える。澤村の例を見てもわかるように、選手が移籍先で生き生きとプレーする姿を見て反感を抱くファン、関係者は皆無。むしろ送り出した球団の英断が評価されるのが今の時代だ。各球団には首脳陣とソリが合わず干されたり、出場機会に恵まれない選手が少なからずいる。この現状に鑑みれば球界は選手間の移動、移籍を一層推進すべきだろう。

 今春、その一環として選手会が今季中の「現役ドラフト」の導入に向けて動きだしていたが、先日、新型コロナの影響により、いつの間にか「継続協議案件」になりつつあると聞いた。これは今の流れに逆行する。再度球界全体が一丸になって動きだす必要があるはずだ。

 新型コロナにより社会は新しい様式に変貌を遂げつつある。球界も旧態依然の慣例を改めなければ未来はない。澤村の好例を忘れぬ前に、各球団でくすぶる選手が新たな場でよみがえる機会が増えることを期待したい。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年、愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。