今や虎のエースとなった西勇輝(29)がライバル相手に意地を見せた。2日の巨人戦(甲子園)で8回5安打1失点と好投し、今季8勝目をマーク。初回に史上179人目の通算1500投球回に到達し、プロ12年目での節目の試合を自らの勝利で飾った。

 巨人追撃の〝ラストチャンス〟となる本拠地での4連戦。その初戦を託された西勇は8回にウィーラーの一発を浴びて巨人戦での2戦連続完封こそ逃したが、安定した投球で相手打線を翻弄した。

 試合後は「何とか長いイニングを消化できて中継ぎを休ませることができた」と満足げな表情を浮かべ、1500投球回達成についても「最低限クリアしたい数字だったので、このままケガなくイニングを積み重ねていきたい」と力強く話した。矢野監督も今季の巨人戦で4戦3勝のエースに「ピッチング内容もですがムードもつくってくれるんで、本当に頼もしいピッチャー」と最敬礼だった。

 そんな右腕がこだわっているのは「走ること」だ。西勇に近しい関係者は「一緒にメシに行ったときでも酒はほとんど飲まず、その後に1時間とか時間を決めてランニングに行くことを続ける。メシ中に時間がたつにつれてソワソワし始めるから、こっちも気を使って『じゃあ切り上げるか。いいから走っておいで』となる」と明かす。

 人知れず努力する姿はあの投手と重なる。通算173勝、2761回2/3の投球回数を誇り、長く巨人のエースとして君臨した桑田真澄氏だ。抜群の野球センスやクレバーな投球術を併せ持っていたが、何よりも印象的だったのはストイックな姿勢だ。

 かつての盟友・清原和博氏は巨人時代に酒を飲んで宿舎に朝帰りした際に、まだ夜が明けないうちに桑田がロードワークに出るところに出くわしたというエピソードを披露していた。投手の基本である「走る」ことをおろそかにしない西勇は、どこまでもストイックにさらなる高みを目指す。